先日、県外のある地方紙の投書欄を見ていたら衝撃的な告白があった。６０代後半の男性からの投書。匿名ではなく肩書きも記している。小学生だった頃、担任の男性教師から性被害を受けていたという内容。

　４年生からクラス替えがなく３年間続いた。放課後の教室で２人だけになった時、教師は彼の体に接触。少年の彼には何が起きたか分からなかった。セクハラという言葉もなかった時代。教師の行為は理科室や音楽室、放送室、林間学校の夜の大広間でも及んだ。

　だれに相談していいか分からない。「悲しくて悔しくて、死のうと思いましたが家族に迷惑をかけないようにこらえました」。人間不信になり人を愛せず、いまだに悪夢を見る。「私はあの教師を殺して復讐（ふくしゅう）したい」。１０年前に新聞に投稿したが掲載されなかったという。

　組織の中で、上位にある者が立場を利用して行う卑劣な犯罪。社会問題化した今でも職場や学校で絶えない。男性が名前を明かして、忌まわしい過去を告白するには相当勇気が要ったはずだ。それでも６０年もかかったのは、同性に対する性加害が異性間よりも社会的な認知度が低かったからだろう。

　ジャニーズ事務所創業者による所属タレントらへの性加害問題が、告白を後押ししたことも間違いない。同事務所は社名の変更、被害者への補償後の廃業などを発表した。何より肝心なのは、長年１人で悩み続けてきた被害者の心をしっかりケアすることだ。