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給食が生命線

2023年10月16日
 埼玉県議会の自民党県議団が9月議会に提出していた「虐待禁止条例」の改正案が撤回されることになった。子どもだけでの留守番などを「放置による虐待と定める」といった内容に、批判が殺到していた。

 子どもの安全を守るという趣旨に異論はない。県議団に決定的に欠けていたのは、国内の「子育て事情」の把握と、子育て当事者への想像力だろう。想像力の欠如で思い出したのが、コロナが猛威を振るっていた3年前の2月末に降って沸いた全国一斉の休校だ。

 このときは政府が非難を浴びた。学童保育の態勢をはじめ、理由はたくさんあったが、その一つに「給食が唯一の栄養源である子どもをどうするのか」というのがあった。そういう家庭があまたあることは分かってはいたが改めてその現実を突き付けられた出来事だった。

 くしくもその2カ月後のユニセフ(国連児童基金)のサイトに、こんな記事が載った。「(コロナによる)休校中に給食を食べることができなくなっている3億7千万人の子どもたちの栄養と健康に深刻な影響が…」。その3億7千万人に含まれるか否かは別にして、日本にも該当者がいる現実―。

 きょうは世界食料デー。終戦からわずか2カ月後の1945年10月16日に、国連食糧農業機関(FAO)が設立されたことにちなむ。食料不足にあえぐ世界の人々はもちろん、子どもをはじめ日々の食事にも事欠く国内の人たちにも思いをはせたい日である。

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