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「知る」ことから始めよう

2023年11月11日
 主に過酷な状況下に置かれた途上国の女の子を支援する国際非政府組織(NGO)のプラン・インターナショナル。そのテレビCMで流れるメッセージは「わたしに違う人生があることすら知らなかった」。

 どれほど厳しい環境下にあっても、当の子ども自身がその世界しか知らなかったら…。先日ある漫画を読んでいて、何度もこの言葉が頭をよぎった。「私だけ年を取っているみたいだ。」(水谷緑、文芸春秋刊)。サブタイトルは「ヤングケアラーの再生日記」だ。

 個人が特定できないよう、複数の子どもの実体験を基に、1人の女の子の物語に仕立てた実録コミック。すさまじいと言っても過言ではない家庭環境で自分の心にふたをして日々を乗り越える少女。だが、次第に心はむしばまれ…。読んでいるこちらの心もひりひりする。

 漫画の主人公もそうだが、当事者が前に進む上で必要なものの一つに「知る」ということがある。宮崎市で先日あった県社会福祉大会。講演したヤングケアラーの元当事者の男性は「『あなたはヤングケアラーです』と初めて聞く言葉を言われ、自分だけではないことを知りホッとした」と語った。

 「知る」のが必要なのは、当事者だけではない。周囲がヤングケアラーについて知ることもまたしかり。現時点では「ヤングケアラーの日」なる啓発の日はないようだ。ヤングケアラー=介護ではないが、きょうが「介護の日」なので、考える機会にしよう。

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