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ほめ言葉のサンドイッチ

2023年12月2日
 日本での知名度はさほど高くないようだが、米国に今年創業60年となる「メアリー・ケイ・コスメティックス」という化粧品会社がある。創始者の故メアリー・ケイ・アッシュさんは同国内では有名な実業家だ。

 同社を「米国で最も働きやすい企業ベスト100」「最も女性が働きやすい企業ベスト10」などに育て上げた、メアリー・ケイさん。従業員はもちろん、とにかく他者を大事にする人だったようだ。語録を見ればいかに彼女が人の尊厳を重んじていたかが分かる。

 「誰かと会うとき、私はいつも『私を大事にして!』と書かれたサインが相手の胸に付いているのだと自分に言い聞かせています」。さらには「批判は必ず、ほめ言葉とほめ言葉でサンドイッチにする」とも(「東洋経済新報社刊「メアリー・ケイの人を活かす23章」)。

 福岡県の宮若市で、市長からパワハラを受けたとして、複数の職員が市公平委員会に申し立てをしたという。またか―。まだ”クロ”と決まっていないものも含めてパワハラ事案が後を絶たない。役所だけでなく、大学で、病院で、政党の支部で。中には相手の人格を完全に否定するような発言も。

 くだんの著書でメアリー・ケイさんは「批判する対象は行為であって、人であってはならない」とも語っている。怒りを抑制できずに「叱責(しっせき)」や「指導」に名を借りた罵詈(ばり)雑言によって自らを窮地に追い込む。そんな愚かな結果を招く前にかみしめたい言葉だ。

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