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「ありがとう」の反対は?

2023年12月5日
 「ありがとう」の反対の意味は「当たり前」。ありがたいは「有ることが難しい」から「有り難い」のであって、そのことに感謝せず「当たり前」だと思ってしまうのは、寂しく悲しいことだと思います―。

 奈良市で2日に開催された、全国の若手僧侶が法話を披露し合う「H1法話グランプリ」。2019年の試行大会を含め今回で3回目となる。冒頭の言葉は出場者の一人、国富町・萬福寺の永井義寛(ぎかん)住職の法話の一部だ。ユーチューブのライブ映像で“観戦”した。

 自身の体験談を織り交ぜつつ「当たり前の日常の背景にある、多くの人々の恩や自然の恵みに思いをはせ感謝する」ことの大切さを説いた法話は、心に染みた。聞きながら思い出したのがみやざき被害者支援センターが毎年募集している一行詩「生命(いのち)のこえ」コンテストだ。

 小学生から一般の部まであるが、子どもや若者の作品にも永井住職の話のように「日常の当たり前」を見つめ直す作品がある。前年度、高校生の部で最優秀賞に輝いた〈ニュースで見たウクライナの同世代の悲惨な現状。「つまらない一日」なんてない。毎日が「ありがたい一日」〉もまさにそうだ。

 国外の戦争をテーマにした小学生の作品などを見ると、どこか複雑な気持ちになる一方で、遠い国の人々のことに胸を痛める感性を心強く思う。そして子どもたちに、今の「当たり前のようで決して当たり前でない」一日一日を大切に過ごしてほしいと思う。

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