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文明は何度も滅びた?

2023年12月8日
 来年の日本公開が決まったそうだ。「オッペンハイマー」。原爆の開発を主導した米物理学者の伝記映画だ。原爆投下後の広島、長崎が描かれていないことへの批判もあるようだが、海外では大ヒットした。

 このオッペンハイマーについて、昔こんな“エピソード”を聞いたことがある。「マンハッタン計画で行われた原爆実験が世界初だったのか」と問われた彼はこう答えた。「近現代ではね」。あくまでげなげな話で、くだんの映画にもこんなシーンはないはずだ。

 オッペンハイマーのこの言葉がまことしやかにささやかれた背景にあるのは「古代核戦争説」だろう。大昔から文明は核戦争で何度も滅びているという説である。いわゆるオカルトの分野の話なのだが「何度も滅び」の部分が妙な説得力を持っているのが悲しいところだ。

 本来ならば「大昔にそんな科学があろうはずもない」という以前に「人間がそんな愚かな過ちを繰り返すはずがない」と言いたいところだが、核の惨禍を目の当たりにしたわずか78年後に、世界はその脅威に再び直面している。核もそうだが、そもそも戦争自体が懲りることなく繰り返されている。

 82年前のきょう日本は戦争に突入し、その後「二度と戦争はしない」と固く誓った。そのことを終戦の日と同じように改めて胸に刻みたい。「太平洋戦争は日本にとって最後の戦争だったね」「20世紀ではね」―。そんな会話を子孫に決してさせないように。

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