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木で鼻をくくる

2023年12月9日
 ことわざは、昔から伝えられてきた知識や教訓を短い言葉で表したものなので「焼け石に水」など、見聞きしただけでイメージできるものが多い。しかし、このことわざは別だ。「木で鼻をくくる」である。

 「くくる」を、本来の「ひもなどで巻いてとめる」とすると、その場面を想像するのは難しかろう。ここでの「くくる」は「こする」を意味する「こくる」が変化したものらしい。昔は鼻水をぬぐう際に木の端を使っており、そうすると痛みで不愉快な顔になる。

 そこから「無愛想に振る舞う」「冷淡にあしらう」という意味になったとか。木で鼻をぬぐうというのもなかなか想像しにくいものではあるが…。「木で鼻をくくった」と言われているのが自民党派閥の政治資金パーティー券問題をめぐっての松野博一官房長官の発言だ。

 連日、記者から問われても「自分は政府の立場でこの場にいるので、答えは差し控える」の一点張り。まるで針が飛んだレコード(これはことわざではないが、古い世代には分かりやすい例えか)である。きのうの衆院予算委でも野党の追及を受けたが、ここでもやはり従来通りの答えに終始した。

 同予算委では、岸田文雄首相も明確な答弁を避け続けた。岸田首相の信条は「信頼と共感の政治」だったはす。政治とカネに絡む疑惑に対して誠実に説明をすることもなく、そんな美辞麗句を掲げられても国民は鼻白(はなじろ)む(しらけて不機嫌になる)だけだろう。

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