「倹約」と「節約」の違いは？　改めて聞かれると答えに窮する。そのような似た言葉を集めた「何がちがう？　どうちがう？　似ている日本語」（佐々木瑞枝著、東京堂出版）を書店で目にし思わず買った。

　読んで、似た言葉の微妙なニュアンスの違いが分かるに伴い、日常生活でうまく使い分けている日本人のすごさを思った。時節柄印象に残ったのは「逃げ道」と「抜け道」だ。「逃げ道」は「逃げて行くことのできる道」。「責任を避ける方法」という意味もある。

　一方「抜け道」は「本道以外に通り抜けられる道」。同書ではそれ以上の説明はないが、辞書を引いてみると「逃れる手だて」ともある。自民党の最大派閥・安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑で、同派所属の閣僚４人がきのう辞表を提出した。事実上の更迭だ。

　政治家にとって政治資金の柱であるパーティー収入。だがパーティー券購入者のチェックの仕組みの不十分さなど問題も多い。その問題を「抜け道」として利用するのはあくまでも人間だ。リクルート事件の反省から当時の自民党が掲げた「政治資金の透明性確保」の精神は一体どこに行ったのか。

　４閣僚は辞任したものの、本人たちからいまだ何の説明もなされていない。当然これで幕引きとはなるまい。東京地検特捜部は、安倍派の強制捜査に乗り出す方針を固めたという。疑惑が事実なら「抜け道」を悪用した当事者に「逃げ道」を与えてはならぬ。