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新幹線の議論

2023年12月17日
 東海道新幹線が開業した1960年代、子どもはこぞって新幹線の絵を描いたものだ。今はあまり子どもが描く新幹線を見ない気がする。複雑な曲面で構成された現在の車両は描くのが難しいせいもあろう。

 現代技術の象徴だった昔に比べれば、新幹線が日本各地に延伸した現在は相対的に子どもたちの憧れが低下したのも一因かもしれない。1973年に基本計画路線に位置づけられたものの、以来進展のない東九州。本県では憧れはどれほど持続しているのだろう。

 新幹線整備をめぐって、やや熱いやりとりが県と延岡市の間であった。きっかけは河野知事の県議会での発言。宮崎―新八代間のルート実現を「有力な選択肢の一つ」と述べて調査研究する方針を明らかにした。これに延岡市の読谷山洋司市長が「理解できない」と異議。

 「基本計画路線は県内では東九州しかない」として、そこに全力を注ぐべきと主張する。県側は「東九州を含めてあらゆる可能性を検討する」と理解を求める。新幹線が沿線以外の人や物の流れにまで及ぼす莫大な影響を考えれば、ルートの選定は県内のどの自治体にとっても重要かつ繊細な課題だ。

 新幹線整備は県民の悲願であり、依然憧れは強い。一方で予想される膨大な地元負担や在来線との兼ね合いから慎重な意見も挙がる。ただ今は自由に議論できる段階。交通インフラ整備でいつも最後尾を歩まされてきた本県だ。遠慮なく未来図を描いていい。

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