ホーム くろしお

異国の地に倒れた邦人

2023年12月21日
 小学5年生のとき、入学当時から仲が良かった友達が病気で亡くなった。知らせを受けたときの、まさに「頭が真っ白になる」感覚は今も覚えている。後にその子の死を悼み、校庭に桜の苗木が植えられた。

 桜には故人の名前が付けられた。今、どうなっているのだろうと思い、学校に問い合わせてみた。あれから半世紀。さすがに校長先生もご存じなかった。生徒も先生も入れ替わっていく。仕方のないことだが、今でも春には満開の花を咲かせていると信じている。

 都城市出身の在イラク大使館書記官・井ノ上正盛さん=当時(30)=が現地で武装集団に殺害されて、今年で20年になる。井ノ上さんをしのんで、母校の上長飯小の校庭に当時の校長たちが植えた桜の幼木「平和の木『井ノ上桜』」は今では7、8メートルにまで成長したという。

 4年前、アフガニスタンで銃弾に倒れた医師の中村哲さんをはじめ、海外でさまざまな活動に従事しているさなかに亡くなった邦人はほかにもいる。本県関係でいえば25年前にタンザニアで銃撃されて亡くなった国際協力事業団(当時)の派遣職員・花岡理英子さん(延岡市出身)のことも忘れるまい。

 つい最近では米西部ネバダ州で日本語などを教えていた69歳の日本人准教授の女性が、銃撃され亡くなっている。今も紛争地をはじめ、世界各地で活動する邦人がいる。志半ばで異国の地に倒れた人々を改めて悼むとともに悲劇が繰り返されないことを祈る。

このほかの記事

過去の記事(月別)