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預かり物の重さ

2023年12月23日
 「預かり主は半分」なることわざがある。「預かり物は半分自分の物と思ってもいい」という意味。だがもう一つの「預かり物は自分の物と思って責任を持ち大切にすべき」の意味の方が共感を得るだろう。

 何かを預かるのは何も人間に限ったことではない。例えば自動車。安全運転を前提とした上での話だが、車は乗っている全ての人の命を預かっていることになる。その命を「自分のもの」とするほどの責任感と自覚がこのメーカーには果たしてあったのだろうか。

 今年4月に発覚したダイハツ工業の品質不正問題だ。全車種の出荷停止および国交省による本社立ち入り検査にまで発展した。不正は34年前から続いており、その車両は64車種に及ぶという。同社の社長が会見で述べたように「自動車メーカーの根幹を揺るがす事態」だ。

 出荷停止は、現在生産している車が安全面などにおいて基準を満たすと国交省が確認するまで続く。不正のあった車種を運転しても違法にはならず、同社社長は「安心して乗っていただければ」と言うものの、帰省などで長距離運転の機会が増える時期でもある。ユーザーは気持ち良くは乗れまい。

 車ではないが、きのうは日航の一部国内線の整備において、不適切な作業があったことが分かった。整備責任者による確認をすることなく運航したという。「ばれなければ」の心境か、それとも慣れか。預かったものの重さの自覚が感じられない事案が続く。

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