生活環境の悪化に無頓着で孤独な生活を送るといった、主に老年期の行動障害を「ディオゲネス症候群」という。名前の由来になったのは古代ギリシャの哲学者ディオゲネスだ。本人としては不本意だろうが。

　大樽（おおだる）の中で生活するなど、変わり者としての逸話には事欠かないディオゲネス。その一つに昼間からランプに明かりを灯（とも）して街を歩き回っていたというのがある。それを見た人が何をしているのかと尋ねると、こう答えたという。「私は人間を探しているのだ」

　ディオゲネスが言わんとするのは「ただ人間の姿をしているだけでは人間とは言えない」ということのようだ。つまりは正直で誠実な「きちんとした人間」ということだろう。彼は、集まってきた人々に対して、この中にはそのような「人間」はいないと毒づいたという。

　自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部はおととい、きのうと２日連続で衆院、参院の２議員の事務所などを家宅捜索した。この問題に関しては１９日に同特捜部が安倍派および二階派の事務所を家宅捜索。その後、前官房長官や前国対委員長らを任意で事情聴取している。

　さらにきのうは、前法務副大臣が公選法違反（買収など）の疑いで同じく地検特捜部に逮捕された。ディオゲネスが今の日本に生きていたらランプを手に「政治家を探している」と言いながら歩き回りそうな、揺れに揺れる永田町・自民党本部周辺の年の瀬である。