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ウエルネスを実践

2024年1月24日
 「都城盆地が一望できて素晴らしかった」。元都城市長の岩橋辰也さんが高度3300メートルからスカイダイビングをしたのは2002年、75歳の時。空から眺めるようにグローバルな視点をいつも持ち続けた。

 市長を5期務めたのは歴代最多。初期の頃、都城支社員として取材したが、頭の回転の速さには舌を巻いた。昔を知る人に聞くと「都城商業学校の頃からトップの秀才だった」という。記憶力も抜群。話し相手の事情もよく覚えていて、人柄に魅せられた人は多い。

 岩橋さんが最も力を入れていたのが南九州の中核都市としての機能強化。国の拠点都市に指定され、さらに産業の集積度を高めるために都城・志布志間「高規格道路」の整備を推進した。ただ同市は都市の規模の割に、目立った観光地が少なく、対外的に知名度が低かった。

 そこで1989年から人や街、自然が元気になることを掲げる「ウエルネス都城」に着手。企業や組織が統一したイメージを打ち出すCI戦略で、自治体としては全国でも先駆けだった。マークを作成し、標語を掲げ、市長が先頭に立って情報発信と話題づくりに努めた結果、市民意識も高まった。

 市長室で「ほら、今これ使っている」と当時珍しい電子手帳を見せてくれた。人一倍好奇心旺盛だった岩橋さんが97歳で亡くなった。健康寿命という言葉もない頃に超高齢社会を見据えてウエルネスを宣言し、率先して実行した岩橋さんには先見の明があった。

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