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川すら凍る寒さ

2024年1月25日
 「北国を旅するなら冬」とした上で「越前・加賀の雪の季節が印象的だった」と書いたのは、文芸評論家の山本健吉だ。「もっともこれは、暖房車でぬくぬくと着いて、暖かい旅館に宿泊するのだから」と。

 「(暖房のなかった)昔の旅人の苦しみを思いやりながら私は今日の旅の楽しさを身にしみて思う」とも記している。厳しい寒さを避けながら楽しむ旅に若干の引け目を感じていたのか。先日来、北陸地方が見舞われている大雪のニュースに、この随想を重ねた。

 「被災した人たちは大丈夫だろうか」と思いをはせるわが身は南国宮崎の、しかも暖房のきいた部屋。食べ物も水も十分にある。別に北陸の人たちのことを心配するのに彼らと同じ環境に身を置かねばならないわけではないが、あまりの状況の違いに申し訳なさを感じる。

 その本県も一昨日から強い寒気の影響で五ケ瀬、高千穂町など各地で厳しい冷え込みとなっている。きのうは、積雪や路面凍結により高速バスや路線バスの一部が運休。高千穂町では通学路の安全が確保できないとして全小中学校で臨時休校となった。また県内の複数箇所でスリップ事故も起きた。

 先日の大寒が暖かく「このまま冬をやり過ごせるか」との期待もしたが、さすがにそう甘くはなかった。きょうから29日までは、七十二候の「水沢腹堅(みずさわあつくかたし)」。川の水すら凍るという意味。くれぐれもお気をつけて。事故にも体調にも。

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