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地震と外国人の避難

2024年1月28日
 住んでいる者には当たり前のことでも旅人の目には新鮮に映る。県防災庁舎の1階展示スペースで「外国人が見た宮崎」という作品展(31日まで)が開かれており、彼らの日ごろの関心がうかがえて楽しい。

 本県在住の外国人が絵画や写真、書道など39点を展示。書道は、お手本の漢字を一生懸命なぞっている様子が伝わってくる。なぜか題材には食べ物が多い。果物、炭火焼き、南蛮、宮崎牛…。飲食店のメニューと格闘した証しだろう。生きるために、まずは食事だ。

 ほかに題材は高千穂、剣道など。「神」もある。絵画や写真もそうだが、精神面から日本人を理解しようとする意欲を感じさせる。本県に住む外国人は約7千人(2020年度)。技能実習が約4割で、他は特定活動、留学や日本人の配偶者など。観光で訪れる人も多い。

 心配なのは災害時。土地の不案内や言葉の壁でパニックを起こす人もいる。能登半島地震でも滞在中の外国人から「どこに避難していいか分からず、不安だった」という声が聞かれた。過去の震災でも駅に外国人が押し寄せたり、「外国人窃盗団が来た」などのデマが出回ったりする混乱があった。

 総務省による「災害時における外国人対応」では、正しい情報の提供が重要として自治体によるSNSでの発信や多言語に対応する支援センター設置などを推奨する。防災は地域での助け合いが基本。そこから外国人もこぼれ落ちない共生社会を目指したい。

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