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紫式部の出社拒否

2024年1月31日
 「源氏物語」の著者・紫式部を主人公にしたNHKの大河ドラマ「光る君へ」を毎回見ている。主な舞台は珍しく平安時代中期の京。案の定、登場人物の縁戚が複雑に絡んで、なかなか人間関係の把握が難しい。

 ガイド雑誌、いわゆるムック本を買い、相関図を手元に置いて見ている。「源氏」同様、登場人物の多くが官職で呼ばれるのも、ややこしさを増す。特に女性は実名がほとんど伝わっていない。紫式部もドラマでは一応名前があるが「藤原為時の娘」とも呼ばれる。

 史料が乏しいので創作の部分が多いが、当時の風俗や習慣が再現されることで世界的な古典「源氏」を理解する一助になるといい。遠い日向国は出る幕がないが、期待したいのが本県の国富町に伝説を残す和泉式部の登場。中宮彰子に仕える女房として紫式部の同僚だった。

 伝説では、和泉式部は病気平癒祈願のため同町の法華嶽薬師寺を訪れた。残念ながらムック本には配役が記されていない。しかし百人一首には娘の小式部とともに名を残す歌人なので、出番があるのではないか。和泉式部は恋多き女性として知られており、登場すればドラマを艶っぽく彩るはずだ。

 「源氏」では世俗で成功しても悩みが尽きない人のさが、特に運命に翻弄される女性の生きがたさが描かれる。宮仕えした紫式部も人間関係に疲れ、自宅に引きこもることもあった。いわば出社拒否。現代に通じる問題が千年前の息づかいから伝わってくる。

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