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初期の段階で諫めよ

2024年2月2日
 小さなというと語弊もあろうが、子どものころに犯した“小さな”盗み。ところが貧しさ故か、それを知った母親は、その子をほめてしまった。やがて大人になったその子は、大きな罪を犯して死刑となる。

 「あのとき母が叱っていてくれたら」とは、その死刑囚の言葉である。幼いころに聞いたこの話は、トラウマのごとく今でも強く記憶に残っている。そして、政治家の問題発言の記事を見るたびに思い出す。決して政治家と死刑囚を同列に論じているのではない。

 要するに「悪しきことは初期の段階で諫(いさ)めることが大事」ということだ。自民党の麻生太郎副総裁が、先日の講演で上川陽子外相について「そんなに美しい方とは言わんけれど」と言及し「おばさん」と呼ぶ映像をテレビで見た。会場からはそれなりに笑いが起きていた。

 過去に問題発言で非難を浴びた政治家もそうだが、おそらく彼らは日ごろからそうした話を身内でしているのだろう。しかし、周りが追従した反応をする中で「これくらいは許される」と思い込み、揚げ句に公の場でそれを言ってしまい謝罪に撤回、場合によっては辞任に追い込まれるはめになる。

 有権者が政治家を育てるという観点に立つならば、早い段階で問題発言に対して「それはだめ」とはっきり言うべきだろう。国や国民のために働こうといういい大人が、そんなことをたしなめられなければ分からないということ自体、情けないことなのだが。

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