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季節の正月

2024年2月10日
 延岡市の今山大師で3日にあった恒例の「節分(せつぶん)会(え)星祭り」に参加させてもらった。年男―というより、実は今年が還暦ということで鐘突き堂からの豆まきにも加えていただき、記念となるよい節分となった。

 特に印象に残ったのは法要の後のあいさつで野中玄雄住職が述べた「季節の正月」という言葉だった。改めて正月について考えてみた。現在の「新暦の正月」は確かに「初春」「新春」と「春」が付くものの、春の実態はまだなく、体感としても春にはほど遠い。

 実際、年賀状には「謹んで新春のお慶(よろこ)びを申し上げます」などと書くが、松の内が明けた後には「寒中お見舞い」や「厳寒の候」と、冬に戻ったかのようだ。これはいうまでもなく「春」が旧暦の正月のことを指しているためだ。今年の旧正月は、きょう2月10日である。

 百科事典によると、1872(明治5)年に政府が太陽暦を採用した後も、長い間正月や盆といった民俗的な年間行事の多くは旧暦で行われていた。それは生産労働の営みと密接に関わっていたからだという。言い換えれば、人間が自然の中で生きていく上では旧暦が合っていたということだろう。

 「小寒」から「節分」までの、いわゆる「寒の内」を抜け、立春を過ぎたきょうの旧正月こそ「正月=春」がしっくりこよう。星祭りの帰り。五ケ瀬川の河川敷に行くと、およそ100万本の菜の花が咲き誇っていた。「季節の正月」を実感しつつ堪能した。

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