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燃えるロボット

2024年2月18日
 テレビのニュースで見たが、米国のサンフランシスコ市で完全自動運転のタクシーが襲撃されて燃え上がる光景は衝撃的だった。何よりも、そういうロボットタクシーが既に公道を走っていることに驚いた。

 事件が起きたのは旧正月を祝う春節でにぎわう中華街。群衆が取り囲む中を数人がスケートボードなどで車をたたいている。「出て行け」の落書きも。幸い車の中は無人。やがて投げ込まれた爆竹が着火したのか、車は勢いよく炎が上がり、完全に燃え尽くした。

 何がこれほど人々の憎悪を駆り立てたのだろうか。調べると、同市で24時間営業のロボットタクシーが認可されたのが昨年8月。安全性に懸念はあったが、運行しながら修正していくという考えが米国らしい。だが人身事故を含むトラブルが度々発生、問題になっていた。

 ただ事件には、急速に普及する人工知能(AI)に対して世界中の人々が抱く不信感や不安が凝縮していたようにも思える。燃え上がる炎に、スピルバーグ監督の米映画「A.I.」(2001年)が描く未来のロボットの”公開処刑”が重なって見えた。壊したり燃やしたりして人々が歓声を上げる。

 はるか先の未来と思っていた。しかし今やさまざまな産業で生成AIが文書を書き、ロボットが千人力を発揮、戦場では無人のドローンが飛び交う。本来生活の向上のために活用すべき最先端の技術だが、大多数の人々の意識が追いついていない怖さがある。

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