2025年01月14日19時32分
目の角膜がむくんで視力が下がる「水疱性角膜症」の患者の目に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)で作った角膜の細胞を移植する1例目の臨床研究で、移植から1年後に矯正視力が0・02から0・5に回復したと、藤田医大や慶応大などの研究チームが14日までに米科学誌に発表した。安全性に問題はなく、角膜のむくみや濁りも改善されたとしている。
チームは2022年10月、70代男性に移植手術を実施。健康な人のiPS細胞から作った角膜内皮と同じ働きをする細胞約80万個を、患者の左目に注射器で注入した。
手術前の患者の視力は眼鏡などで矯正しても0・02で矯正不能だったが、移植して1年後に、コンタクトレンズで0・5、眼鏡で0・07に改善した。合併症や副作用などはないという。
水疱性角膜症は水分量を調整する角膜の内側の内皮細胞が減ることで、角膜がむくんだり、濁ったりし、失明の恐れもある。治療法は角膜移植があるが、提供者が見つかるまで数年かかる。