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技能実習制度見直し

2022年12月2日
◆労働力の穴埋め 認識捨てよ◆

 外国人技能実習制度と特定技能制度の見直しを検討するため、政府は有識者会議を設置した。来年春をめどに中間報告をまとめたいとしている。技能実習制度は、日本の建設業や製造業、農業などで外国人が技術や知識を習得し、母国の発展に生かしてもらうという「国際貢献」を掲げ、1993年4月に始まった。

 厚生労働省の外国人雇用状況によると2021年10月末時点で、全国の実習生は約35万人。本県では外国人労働者5236人のうち、実習生は65・3%の3419人に上る。この割合は全国平均20・4%に対して本県は高く、実習生の労働環境改善は身近で切実な問題だ。

 実習生の受け入れ態勢に心を尽くす企業がある一方で、実習生の多くは就労先の企業などで「安価な労働力」として扱われ、長時間労働や賃金の不払い、ハラスメントが問題になってきた。また実習の建前から、転職の自由はなく、家族を呼び寄せることもできない点も課題になっている。

 2019年4月には外国人労働者の受け入れを拡大しようと、特定技能制度が導入された。一定の実習経験を積めば、技能制度に移れる。日本人と同等以上の報酬が保障され、条件付きで転職も可能。場合によっては家族帯同や在留期間の延長も認められるが、ハードルはかなり高い。このため内外で「人権侵害」の批判がやまない。

 少子高齢化を背景に労働力不足が深刻化し、日本社会にとって、今や外国人は労働の担い手として欠かせない存在だ。にもかかわらず、それにふさわしい扱いを受けられずにいる。人権を議論の要に据え、抜本的な見直しにつなげる必要がある。

 多くの実習生は母国の送り出し機関で求人情報を得て、日本政府が許可した監理団体を通じて実習先の企業などと雇用契約を結ぶ。実習生2千人余りに出入国在留管理庁が調査をしたところ、送り出し機関や仲介業者らに平均して日本円で約54万円を支払っていた。半数以上が借金をして来日している。

 実習制度を廃止、技能制度に一本化して改善を図る案もあるが、悪質な仲介業者による搾取を効果的に規制できなければ、根本的な解決は望めない。政府は主要な送り出し国との間で、悪質業者を排除する覚書を締結するなど対応するが、実効性には疑問の声が上がっている。

 まず、転職の自由や家族の帯同、在留期間更新などの仕組みを整えていく必要がある。送り出し国が多いアジアでは経済成長が進み、日本との賃金格差も縮まっている。労働力の穴埋めという認識を捨て、社会の一員として迎え入れる必要がある。

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