日銀が緩和修正
2022年12月22日
◆後手に回ったひずみの是正◆
日銀は、大規模な金融緩和の部分的な修正を決定した。2%の物価目標を超えるインフレになりながら大規模緩和を維持し続けたことで、急速な円安の進行をはじめ、金融・外国為替市場で大きなひずみが生じていた。今回の修正はその弊害是正の一歩に当たるが、遅きに失したと言わざるを得ない。
「デフレからの脱却」を掲げた安倍晋三政権の下、日銀は黒田東彦総裁が主導して2013年4月から大規模緩和をスタート。16年1月に短期金利のマイナス金利政策、同年9月には長期金利を「0%程度」へ固定する追加策を決めた。長期金利については0%程度の目標を変えないまま、市場取引による動きを限定的に許容して「上下0・25%」の変動を認めてきたが、今回これを「上下0・5%」へ拡大することを決めた。
高インフレに対応して米欧が強力な金融引き締めを実施中のため、その影響が日本へも波及して長期金利は上昇余地を探る状態だった。今までは日銀が0・25%以下へ抑えてきたが変動可能幅が拡大することで、今回の決定はわずかにせよ「利上げ」と同じ効果をもたらすと理解できる。日銀の決定を受けて金融市場で長期金利が急上昇、為替市場でドルやユーロに対して円が急騰したのは自然だ。
ただ、日銀の対応が後手に回った点は疑いようがない。エネルギーや食品などの値上がりで消費者物価(生鮮食品を除く)の上昇幅は今春から2%を上回っており、10月には前年同月比3・6%と約40年ぶりの上昇率に達していたからだ。
この間も黒田総裁は、エネルギー高を主因としての物価高であり経済の好循環による賃上げを伴っていないとして、大規模緩和を変更しない考えを再三強調してきた。
このかたくなな日銀の姿勢が、利上げを急ぐ米欧との金利差拡大などを通じて円下落につながり、10月には一時1ドル=150円台と約32年ぶりの水準を記録。円安による輸入コストの上昇が物価高騰を一層悪化させる事態となっていた。
間もなく丸10年がたつ大規模緩和は課題が山積みである。特に変動幅を拡大したとはいえ長期金利の低位固定化は、国債発行による借金への抵抗感を政府と与党からほとんど失わせた。その結果が1千兆円を超える国債残高であり、半分以上を日銀が購入・保有する異常事態だ。
日銀の緩和策を縛ってきたのが、2%目標を明記し、政府と2013年1月に結んだ「共同声明」である。黒田氏は来年4月に任期満了となる。岸田文雄首相には次期総裁選びと並び、声明を経済環境にふさわしい内容へ見直すことを求めたい。
日銀は、大規模な金融緩和の部分的な修正を決定した。2%の物価目標を超えるインフレになりながら大規模緩和を維持し続けたことで、急速な円安の進行をはじめ、金融・外国為替市場で大きなひずみが生じていた。今回の修正はその弊害是正の一歩に当たるが、遅きに失したと言わざるを得ない。
「デフレからの脱却」を掲げた安倍晋三政権の下、日銀は黒田東彦総裁が主導して2013年4月から大規模緩和をスタート。16年1月に短期金利のマイナス金利政策、同年9月には長期金利を「0%程度」へ固定する追加策を決めた。長期金利については0%程度の目標を変えないまま、市場取引による動きを限定的に許容して「上下0・25%」の変動を認めてきたが、今回これを「上下0・5%」へ拡大することを決めた。
高インフレに対応して米欧が強力な金融引き締めを実施中のため、その影響が日本へも波及して長期金利は上昇余地を探る状態だった。今までは日銀が0・25%以下へ抑えてきたが変動可能幅が拡大することで、今回の決定はわずかにせよ「利上げ」と同じ効果をもたらすと理解できる。日銀の決定を受けて金融市場で長期金利が急上昇、為替市場でドルやユーロに対して円が急騰したのは自然だ。
ただ、日銀の対応が後手に回った点は疑いようがない。エネルギーや食品などの値上がりで消費者物価(生鮮食品を除く)の上昇幅は今春から2%を上回っており、10月には前年同月比3・6%と約40年ぶりの上昇率に達していたからだ。
この間も黒田総裁は、エネルギー高を主因としての物価高であり経済の好循環による賃上げを伴っていないとして、大規模緩和を変更しない考えを再三強調してきた。
このかたくなな日銀の姿勢が、利上げを急ぐ米欧との金利差拡大などを通じて円下落につながり、10月には一時1ドル=150円台と約32年ぶりの水準を記録。円安による輸入コストの上昇が物価高騰を一層悪化させる事態となっていた。
間もなく丸10年がたつ大規模緩和は課題が山積みである。特に変動幅を拡大したとはいえ長期金利の低位固定化は、国債発行による借金への抵抗感を政府と与党からほとんど失わせた。その結果が1千兆円を超える国債残高であり、半分以上を日銀が購入・保有する異常事態だ。
日銀の緩和策を縛ってきたのが、2%目標を明記し、政府と2013年1月に結んだ「共同声明」である。黒田氏は来年4月に任期満了となる。岸田文雄首相には次期総裁選びと並び、声明を経済環境にふさわしい内容へ見直すことを求めたい。