防衛費財源
2022年12月23日
◆国民軽視した方針 身勝手だ◆
東北復興を願う国民の気持ちを「流用」し、戦争の反省から設けた財政の歯止めはなし崩し、自らの前言と政策の矛盾を気にかけない首相―。防衛費増額の財源を巡る政府、与党のありさまは、国民の政治不信を一層深刻にした。
政府、与党は5年間で総額43兆円へ増額する防衛費の財源確保策をまとめた。2027年度以降の法人、所得、たばこの3税による計年1兆円強の増税が柱で、与党税制改正大綱に盛り込んだ。
国民の気持ちをないがしろにしているのが、東日本大震災の復興特別所得税の枠組みを使った、新たな防衛目的税の創設である。復興財源のための所得税の上乗せをほぼ半分に減らし、その分を新税へ流用することで2千億円程度を確保する。
両方を合わせた負担は今までと変わらず、税を課す期間を延長することで復興財源の総額は減らないと政府と与党は説明する。だが、まやかしだ。賃金が増えない中、国民が復興税を受け入れてきたのは被災地の早期再生を望めばこそである。すり替えはもってのほかだ。
政府は、自衛隊の施設整備費の一部を建設国債による借金で賄うことも決めた。これまで防衛費は「消耗的な性格を持つ」(1966年の福田赳夫蔵相国会答弁)として国債を認めてこなかった方針の大転換である。
財政法が国債の使途を公共事業などに限っているのは、野放図な戦費調達で財政危機を招いた先の大戦への反省があるためで健全財政の要だ。それを財源集めに窮したからと放棄するのではご都合主義が過ぎる。
首相は国債の選択肢は「未来の世代に対する責任として取り得ない」と明言していた。これでは子どもたちへの背信だ。
防衛財源を巡る問題の根本原因は国内総生産(GDP)比2%、5年で43兆円と身の丈に合わない規模を最優先にしたからにほかならない。
にもかかわらず政府、与党から巨額歳出をいさめる声はついぞ聞かれなかった。それどころか、増税は避け国債で賄うべきだとの自民党の「借金大合唱」を見るにつけ、国民の不信感はより深まったに違いない。
空前の予算増大と国民負担を求めながら、財源捻出のもう一つの柱である歳出見直しに関連して「身を切る改革」の提案が、首相や与党から皆無である点は理解し難い。議員歳費とは別に月100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の是正をはじめ、歳費減額、議員宿舎の返上、そして政党交付金の見直しと候補は山ほどある。巨額歳出と負担に見合わずとも、?かむりは許されない。
東北復興を願う国民の気持ちを「流用」し、戦争の反省から設けた財政の歯止めはなし崩し、自らの前言と政策の矛盾を気にかけない首相―。防衛費増額の財源を巡る政府、与党のありさまは、国民の政治不信を一層深刻にした。
政府、与党は5年間で総額43兆円へ増額する防衛費の財源確保策をまとめた。2027年度以降の法人、所得、たばこの3税による計年1兆円強の増税が柱で、与党税制改正大綱に盛り込んだ。
国民の気持ちをないがしろにしているのが、東日本大震災の復興特別所得税の枠組みを使った、新たな防衛目的税の創設である。復興財源のための所得税の上乗せをほぼ半分に減らし、その分を新税へ流用することで2千億円程度を確保する。
両方を合わせた負担は今までと変わらず、税を課す期間を延長することで復興財源の総額は減らないと政府と与党は説明する。だが、まやかしだ。賃金が増えない中、国民が復興税を受け入れてきたのは被災地の早期再生を望めばこそである。すり替えはもってのほかだ。
政府は、自衛隊の施設整備費の一部を建設国債による借金で賄うことも決めた。これまで防衛費は「消耗的な性格を持つ」(1966年の福田赳夫蔵相国会答弁)として国債を認めてこなかった方針の大転換である。
財政法が国債の使途を公共事業などに限っているのは、野放図な戦費調達で財政危機を招いた先の大戦への反省があるためで健全財政の要だ。それを財源集めに窮したからと放棄するのではご都合主義が過ぎる。
首相は国債の選択肢は「未来の世代に対する責任として取り得ない」と明言していた。これでは子どもたちへの背信だ。
防衛財源を巡る問題の根本原因は国内総生産(GDP)比2%、5年で43兆円と身の丈に合わない規模を最優先にしたからにほかならない。
にもかかわらず政府、与党から巨額歳出をいさめる声はついぞ聞かれなかった。それどころか、増税は避け国債で賄うべきだとの自民党の「借金大合唱」を見るにつけ、国民の不信感はより深まったに違いない。
空前の予算増大と国民負担を求めながら、財源捻出のもう一つの柱である歳出見直しに関連して「身を切る改革」の提案が、首相や与党から皆無である点は理解し難い。議員歳費とは別に月100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の是正をはじめ、歳費減額、議員宿舎の返上、そして政党交付金の見直しと候補は山ほどある。巨額歳出と負担に見合わずとも、?かむりは許されない。