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秋葉復興相更迭

2022年12月29日
◆政治改革へ指導力発揮せよ◆

 内閣改造からわずか5カ月足らずで4人の閣僚が去った。政権の体をなしていないと言われても仕方ない異常な事態である。岸田文雄首相の任命責任は極めて重く、「経験と実力に富んだ閣僚」と自賛した改造の意義は吹き飛び、国民の不信は積もるばかりだ。

 秋葉賢也復興相が政治資金問題などで更迭された。自身の二つの政治団体が2011~20年、妻と母親に宮城県内の事務所賃料として計約1400万円を支払い、母親が確定申告していなかったことが発覚。昨年の衆院選で、秘書に選挙運動の報酬を支払った公選法違反の疑惑なども表面化していた。

 秋葉氏の交代は当然で、むしろ首相の決断は遅きに失した。復興相の”途中辞任”は前身の復興対策担当相を含め3人目、東日本大震災の復興絡みの失言・放言で更迭された閣僚もこれまで複数おり、被災地の気持ちを再び傷つけてしまった。

 過去にLGBTなどの性的少数者を「生産性がない」と表現したり、性暴力被害を公表したジャーナリストを中傷するツイッター投稿に「いいね」を押したりするなどした杉田水脈(みお)総務政務官も切った。そもそもこうした人権意識の持ち主ということは周知されており、任命した岸田首相の感覚を疑う。

 折しも、政治資金パーティーの収入計約4千万円を政治資金収支報告書に記載していなかった薗浦健太郎氏が衆院議員の辞職に追い込まれたばかり。臨時国会では、政治資金を巡る疑惑で、寺田稔氏も総務相を追われている。政治とカネの問題は治癒困難な病巣と呼ぶほかない。

 これだけ不祥事が続発している以上、その場しのぎの対応で幕引きにするわけにはいかない。政治資金制度の抜本改革に着手すべき時ではないか。

 政治とカネで何よりも肝要なことは、透明性の確保だ。総務相と都道府県選管の所管に分かれ乱立する政治団体を大胆に絞り込む、ないしは議員ごとに名寄せ検索できるようオープンデータ化して公開すれば、政治の風景はかなり変わる。複数の政治団体や支部の間の複雑な出し入れを防ぎ、カネの流れが一目で分かるようにすれば、有権者も判断しやすいし、議員本人も問題の把握が容易になる。

 岸田首相は就任以来、「信頼と共感の政治」を掲げてきた。不祥事のたびに「説明責任を果たす必要がある」と人ごとのようなコメントを繰り返すのではなく、「令和の政治改革」へ指導力を発揮することが不可欠だ。放置している調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開も含め具体的な行動に踏み出せないならば、「増税」を語る資格はない。

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