医療保険改革
2022年12月30日
◆負担増の目的 丁寧に説明を◆
医療保険制度改革の全体像が今月まとまった。75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料負担増が柱だ。政府は来年の通常国会に関連法案を提出する。政府は改革の必要性を丁寧に説明し理解を得てほしい。
75歳以上の医療保険料では、所得が高い人ほど多く負担する仕組みを強化する。
2024年度には年収が211万円を超す人、25年度からは153万円超の人を対象に保険料を引き上げる。保険料の上限額も、現在の年66万円から24、25年度の2年間で段階的に年80万円へ引き上げる。後期高齢者約1890万人の約4割で負担が増える見通しだ。
今回の改革は、現役世代の負担軽減が目的である点に留意したい。窓口負担を除く75歳以上の医療費は年約17兆円。財源は公費が約5割のほか、約4割を現役世代の保険料の一部を回す「支援金」で賄っており、後期高齢者が支払う保険料は約1割に過ぎない。
この10年余りで現役世代の負担が1・7倍に膨らんだ一方、75歳以上の分は1・2倍にとどまり、世代間の負担格差が拡大している。25年度までには団塊の世代が全員後期高齢者の仲間入りをするから、医療費の急増は避けられず、格差はさらに広がりかねない。
少子高齢化で現役世代の負担が限界に近づきつつあることを考えると、高齢者にも支払い能力に応じた負担を求めるのは適切だろう。とはいえ改革が実現しても、現役世代の負担軽減効果は、加入する制度によって異なるが年300~1100円でしかない。給付の効率化や、高齢者負担に関する金融資産の反映など、さらなる改革を続けなければならない。
また、現役世代向けの給付充実策として、子どもを産んだ人に保険財政から支給する「出産育児一時金」を増額。現行の原則42万円から50万円に引き上げる。一時金費用の一部を75歳以上の保険料から拠出するよう見直す。出産や子育てを全ての世代で公平に支援するという意味で望ましい形と言えよう。
このほか、現役世代内の格差是正も図る。高所得者の多い大企業の健康保険組合の負担を増やす。65~74歳の医療費に対する各医療保険からの納付金は現在、加入者数を基に算出しているが、加入者の給与水準に応じた計算手法を一部導入する。能力に応じた負担であり、妥当な見直しだ。
医療保険に限らず、介護保険の給付と負担を巡っても改革議論が進んでいる。持続的な制度への改革が必要だが、医療と介護を合算した負担増が過重にならないよう慎重に検討することを忘れてはならない。
医療保険制度改革の全体像が今月まとまった。75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料負担増が柱だ。政府は来年の通常国会に関連法案を提出する。政府は改革の必要性を丁寧に説明し理解を得てほしい。
75歳以上の医療保険料では、所得が高い人ほど多く負担する仕組みを強化する。
2024年度には年収が211万円を超す人、25年度からは153万円超の人を対象に保険料を引き上げる。保険料の上限額も、現在の年66万円から24、25年度の2年間で段階的に年80万円へ引き上げる。後期高齢者約1890万人の約4割で負担が増える見通しだ。
今回の改革は、現役世代の負担軽減が目的である点に留意したい。窓口負担を除く75歳以上の医療費は年約17兆円。財源は公費が約5割のほか、約4割を現役世代の保険料の一部を回す「支援金」で賄っており、後期高齢者が支払う保険料は約1割に過ぎない。
この10年余りで現役世代の負担が1・7倍に膨らんだ一方、75歳以上の分は1・2倍にとどまり、世代間の負担格差が拡大している。25年度までには団塊の世代が全員後期高齢者の仲間入りをするから、医療費の急増は避けられず、格差はさらに広がりかねない。
少子高齢化で現役世代の負担が限界に近づきつつあることを考えると、高齢者にも支払い能力に応じた負担を求めるのは適切だろう。とはいえ改革が実現しても、現役世代の負担軽減効果は、加入する制度によって異なるが年300~1100円でしかない。給付の効率化や、高齢者負担に関する金融資産の反映など、さらなる改革を続けなければならない。
また、現役世代向けの給付充実策として、子どもを産んだ人に保険財政から支給する「出産育児一時金」を増額。現行の原則42万円から50万円に引き上げる。一時金費用の一部を75歳以上の保険料から拠出するよう見直す。出産や子育てを全ての世代で公平に支援するという意味で望ましい形と言えよう。
このほか、現役世代内の格差是正も図る。高所得者の多い大企業の健康保険組合の負担を増やす。65~74歳の医療費に対する各医療保険からの納付金は現在、加入者数を基に算出しているが、加入者の給与水準に応じた計算手法を一部導入する。能力に応じた負担であり、妥当な見直しだ。
医療保険に限らず、介護保険の給付と負担を巡っても改革議論が進んでいる。持続的な制度への改革が必要だが、医療と介護を合算した負担増が過重にならないよう慎重に検討することを忘れてはならない。