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県北展望

2023年1月5日
◆台風からの復興進め希望を◆

 県北にとって台風14号被災からの復旧、復興を前進させる1年が幕を開けた。国は激甚災害に指定し国庫補助率を引き上げるなど公共土木事業の早期復旧を後押し。延岡市に災害救助法を適用し、家の応急修理などを支援した。ただ、浸水被害を受けた住民の中には、工務店の手が回らず修繕がままならなかった人や、精神的なダメージが回復しないまま年を越した人もおり、元の生活に戻るには程遠く継続的なケアが求められる。

 昨年9月18日夜から19日にかけて本県を襲った台風14号は、県北地域に深い爪痕を残した。諸塚村七ツ山では国道327号が約30メートルにわたり崩落。椎葉村大河内の国道265号も通行止めが続く。河川に流れ込んだ土砂は撤去されておらず、また大雨が降るとどうなるのかと住民の不安は解消されていない。

 延岡市では五ケ瀬川や祝子川の支流などがあふれる内水氾濫が各地で起こり、市内で457棟が床上浸水した。市は今後の対策に生かすため、降水量や河川水位など時系列を追って確認するなどして内水氾濫が起きたメカニズムの解明を行う。避難指示を出すタイミングなど、出水期までに改める点を洗い出し改善につなげたい。

 市はパイピング現象が起きた同市北方町川水流地区などでボーリング調査にも乗り出す。ただ、堤防など河川改修に関しては国、県の役割が大きい。市の調査、分析の結果を共有しスムーズな対策につなげてほしい。

 また、同市三須町での浸水被害は、農業用水路を管理する市土地改良区が水門を閉めなかったことが原因だった。前任者から引き継がれていなかったことによるミスで、マニュアルの見直しを進めるという。防災に関することだけに、行政も積極的に関与した上で再発防止に努めるべきだ。

 県北では延岡市が今年、市制90周年を迎えた。昨年は延岡城・内藤記念博物館、多目的文化施設「野口遵(したがう)記念館」が相次ぎ開館するなど、飛躍する下地を築いてきた。昨年創業100周年だった旭化成は、10月に同市の工場稼働からも1世紀となり、延岡の街づくりに影響を与えてきた歴史を振り返ることにもなるだろう。五ケ瀬町の「荒踊」を含む全国の民俗芸能「風流(ふりゅう)踊」はユネスコ無形文化遺産登録が昨年決まり、400年以上にわたり荒踊を受け継いできた同町坂本地区も新たなステージに立った。

 コロナ禍4年目になる中、こうしたプラス要素を基に、それぞれの自治体が次世代を見据え、どう取り組んでいくのかが試される1年になる。復興を着実に進めつつ、住民に夢や希望を与えられる施策を望みたい。

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