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日南展望

2023年1月10日
◆高速道開通へ地域も端境期◆

 昨年末、日南市・北郷小中にサンタクロースの格好をした2人の男性が訪れ、全校生徒に北郷産のスイカを贈った。一人は冬のスイカを作る農家。もう一人は、東九州道清武南―日南北郷(17・8キロ)の関係工事を行った建設会社の社員。本年度内に開通を予定する同区間を活用して未来に羽ばたいてほしいという願いを込めた贈呈だった。いよいよである。

 県南から北九州市までが高速道路でつながる。大転換と言わずしてなんと表現すればよいのか。観光、物流、商工業、農林水産業、医療福祉、教育…。多くの分野で決して小さくはない効果が発揮されることは間違いない。都市部との所要時間短縮で居住域についてもまた新たな発想が生まれてくるだろう。

 人の流れが期待される観光に特化して考えるとき、同市ではここ数年、特筆すべき事象が渦巻いている。県南温泉施設の要とも目されてきた同市北郷町のサンチェリー北郷。建築基準法上の不備が見つかり、2021年4月から営業休止となっている。市は当初、民設民営を目指していたが公募がうまくいかずに断念、公設へと転換した。公金投入には、採算性も含めて当然厳しい目が向けられる。今秋オープンする道の駅「北郷」(仮称)とのシナジー(相乗効果)にも関心は高い。

 飫肥では共同事業体(JV)が歴史的建造物4施設の利活用を計画していたが、20年9月から「2年以内の改修工事着手、または利活用事業を実施」という要件が守れずに頓挫。市はJVに対し実施法人選定の取り消しを行った。直近の対策として本年度末までは無料開放。23年度は市の直営とし、その後は指定管理制度に戻すことも視野に入れている。飫肥には観光客を誘引する魅力がある。ぜひとも良き方向に進んでほしい。

 一方、油津では戸村精肉店元社長の戸村サチ子さんが市に寄付した8億円の活用について、市は青写真を示した。同地区の橋修理や文化遺産展示などの事業に充て、堀川運河周辺の地域づくりを進めてにぎわい創出や周遊促進などを目指す方針だ。事業の具体化が注目される。

 交通インフラに目を向けると、JR日南線はたびたび自然災害に翻弄(ほんろう)されてはいるが、生活路線、観光ツールとしても重要。国道220号の海の景観や県道日南高岡線の美しい山林の景色も観光に潤いを与える。

 観光一つ取っても変化に富む。何かが大きく変わるとき、時には新陳代謝を繰り返し、背後に大なり小なりの動きがあることは歴史が証明している。高速道開通という大転換を目前にして、地域社会も端境期を迎えているといえるのでがないか。

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