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地域の国際化

2023年1月17日
◆留学生定着へ支援と変革を◆

 県内在住の外国人が昨年6月末時点で初めて8千人(出入国在留管理庁統計)を超え、身近な場所での国際化が進んでいる。多くは第一、第二次産業で働く技能実習生だが、留学生数も増加。外国人材、中でも高い専門知識を持つ留学生は今後の地域活性化に不可欠な存在だ。地域全体で留学生定着を図る取り組みが求められる。

 県内で働く技能実習生はこのうち3299人で、全国トップの41・2%。留学生は658人で10年前の2・1倍に増えた。出身国も多様化している。

 昨年12月、県内留学生が対象の企業見学バスツアー(産業人財育成プラットフォーム主催)が開かれた=写真。宮崎大、宮崎公立大、宮崎国際大に留学中の11カ国18人が参加して宮崎市の道本食品、共立電機製作所、宮崎日機装の3社を訪問。工場見学や従業員との意見交換を通して地元企業のリアルな姿を垣間見る貴重な1日となった。

 同市の多文化designコンパスの高栁香代代表は「地元企業と留学生との接点ができたことは大きな一歩。魅力的な人材として留学生を捉え、雇用する定着への空気も盛り上がってきた」と評価。一方で「接点」から「雇用」へたどり着くまでには幾多の課題があるようだ。

 日本学生支援機構が昨年9月に行った調査によると、日本国内での就職を希望する留学生は約6割。これに対し、20年度卒業・修了者のうち日本国内に就職した人は約3割にとどまる。

 高い日本語能力が求められる、日本特有の就活慣行になじみがない―などが要因だ。県内留学生は卒業後、都市圏に就職するケースがほとんどで、留学生版”県外流出”も課題の一つになっている。解消には企業の多言語化、柔軟性が大切だ。

 加えて、バスツアーを企画した宮崎大学学び・学生支援機構地域人材部門「キャパタス」の北原春華さんが指摘するのは多様化に対応する地域全体での取り組み。「家族帯同している留学生もおり、留学生本人はもちろん、家族も安心して生活できる地域が必要」と話す。

 就職先だけでなく、学校や交通機関などあらゆる観点から、外国人が安心感や快適さを感じられるかどうか。多様なルーツや生活習慣に配慮できるかどうか。こうした点も定着への重要な判断材料だ。国籍や年齢、性別などの区別なく誰もが安心して暮らせるユニバーサルな地域を目指し、変革を前向きに捉えて行動を促していきたい。

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