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宮日農業技術賞

2023年1月20日
◆次世代勇気づける贈り物だ◆

 第65回宮崎日日新聞農業技術賞の受賞者に2個人、4団体、2法人が決まり、きょう宮崎市の宮日会館で贈呈式が行われる。本県の産業振興という観点に加え、県内外の食卓を支える農業の未来形を示す取り組みとしても評価に値する。その努力に大きな拍手を送りたい。

 昨秋の全国和牛能力共進会で好成績を上げて注目を集めた畜産業から2団体、1法人が受賞する。2010年の口蹄疫発生によって牛全頭を失った尾鈴地域では尾鈴肉用繁殖牛部会BL互助会=川南、都農町=が感染予防対策を徹底し、清浄化へのモデルを築き上げた。

 和牛肥育経営の桜花牧場=都城市山田町=は、自社ブランド「乙守牛」を国内はもとより香港にも出荷し、知名度アップに貢献。品質向上への研究と実践が実を結んだ。JA延岡わぎゅう女性部「べこちゃん乙女会」は延岡市の肉用牛繁殖経営の女性農業者が交流する団体で、子牛競り市の準備や清掃などにも積極的に関わる。

 口蹄疫と同様、逆境からの再生を印象づけたのはえびの市の西郷営農だ。同市では18年の硫黄山噴火後に河川の水質が悪化し、稲作を断念する農家もあった。その中で同社は水が引けなくても生産できる麦栽培に乗り出し経営安定化につなげた。現在では稲作も再開し、大麦との二毛作で作付面積は噴火前を上回り生産量を伸ばしている。

 険しい山間部での活動も目を見張るものがある。JA日向の冬春ミニトマト専門部会長、田村勝幸さん=美郷町西郷=は収量増やコスト低減につながる栽培管理技術を研究。農地を複数のブロックに分け、それぞれの生育ステージに合わせて作業を管理するブロック管理栽培手法を確立。新規就農者への支援も行い、地域の頼れる存在だ。

 地元特産品であるクリの加工・販売に成功しているのはマロンハウス甲斐果樹園代表の甲斐喜夫さん=日之影町。栗きんとん「栗九里(くりくり)」の人気が高く、地域の遊休農地を活用して生産面積を拡大。地元農家からは原材料のクリを高値で仕入れる。人口減少が進む中山間地域において、農業や地域の維持に大きく貢献している。

 花き栽培からは2団体。花材として好評なベビーハンズの生産に取り組むJA宮崎中央キイチゴ研究会=宮崎市、スイートピーとホオズキとの複合経営を確立している日南市ほおずき生産組合が選ばれた。

 感染症や戦争、食糧危機など世界的不安定が身近になり、地域で営まれる産業や日常の暮らしの重要性が増している。日々重ねられた受賞者の試行錯誤は地域の希望であり、次世代を勇気づける贈り物だ。

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