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コロナ死者増加

2023年1月23日
◆高リスク患者をどう守るか◆

 国内で新型コロナウイルス感染者が初確認されてから3年たった。最近の1日当たり死亡報告数は500人前後と過去最多の水準にある。累計は6万人超で、昨年末から約1カ月で1万人と死者は目に見えて急増している。

 オミクロン株は感染力が強いが、重症化しにくいとされる。その上、多くの人が感染やワクチン接種で免疫を獲得し、感染者の重症度は低くなった。しかし流行「第8波」ではオミクロン株派生型へ置き換わるなどして感染者数が膨らみ、連動して死者数が増加した。

 さらに、厚生労働省の年代別死者数データによれば、男性は80代が最も多く、それに70代、90代以上が続く。女性は80代と90代以上が特に多い。重症化しやすい高齢者への感染が施設での集団感染などにより増加したことで、死者数急増に直結したと見るべきだ。

 だとすれば、実行すべき対策は、高齢者や基礎疾患を抱えた高リスクの人々をいかに守るかに尽きる。

 昨年9月からコロナ感染者の「全数把握」が簡略化されたことで、新規感染者数がきちんとカウントされていない懸念も指摘されている。過去最多水準の死者数から推定すれば、実際には昨年夏の第7波を超えるような最大規模の感染拡大を迎えている可能性が高い。

 政府や自治体はもちろんだが、私たち国民もその危機感を共有し、マスク着用、3密回避、ワクチン接種など感染防止対策の基本に戻る必要があることも言をまたない。

 欧米など多くの国々は新型コロナに関する規制をほぼ撤廃している。街中や飲食店でもマスク着用者はごくわずかだ。日常を取り戻し自然体でウイルスと共存する社会がグローバルスタンダードとなっている。

 ビジネス、留学、観光などで海外と往来するのが当たり前の今の世界にあって、日本だけゼロコロナ政策へ逆戻りすることは非現実的だ。

 考えるべきは、ウィズコロナの経済社会を前提として高リスクな高齢者らへ感染防止や医療提供の資源を集中させることだ。高齢者施設の感染対策への予算や人員を強化したい。コロナ感染が原因で持病や体調が悪化し、死に至るケースが多い高齢者への医療体制を再構築する必要もある。

 コロナ禍も4年目に入り、いつまでも危機対応は続けられない。政府は感染症法上の位置付けについて、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する意向を固めたが、医療費やワクチン接種の公費負担を当面維持するなど混乱回避にも意を尽くしてほしい。

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