施政方針演説
2023年1月25日
◆具体策示し徹底した議論を◆
通常国会が召集され、岸田文雄首相が施政方針演説を行った。先送りできない課題の筆頭に防衛力の抜本的強化を挙げ、昨年改定した国家安全保障戦略で反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛予算の大幅増額を決定したと強調。課題として「構造的な賃上げ」「次元の異なる少子化対策」を掲げた。
しかし、防衛予算増額の財源については「将来世代に先送りしない」と述べるにとどめ、昨年自らが表明した「増税」の明言を避けた。少子化対策も6月までに将来の予算倍増に向けた大枠を示すと述べただけで、その財源にも触れなかった。
首相は防衛力強化を「強い覚悟」で決定したと述べた。ならば自民党内に反対論が残るとはいえ、国民に負担を求める増税が必要だと自らが考える理由を丁寧に語るべきだ。少子化対策も財源を含む具体策が示されなければ論戦は成立しない。早急に具体策を示すよう求めたい。
首相は演説冒頭で「政治は慎重な議論と検討を積み重ねて決断」し、「その決断について国会で議論をし、最終的に実行に移す営みだ」と述べ、「国民の前で正々堂々議論」すると強調した。防衛力強化や原発を最大限活用するエネルギー政策の転換、新型コロナウイルスの感染症法上の5類への移行などは国会閉会中に決定。論戦の意義に言及したのは「国会軽視」との批判をかわす狙いだろう。
防衛力強化では、5年間で43兆円の予算をつぎ込み、他国を直接攻撃できる能力を整備する。首相は「専守防衛」「平和国家」を変えるものではないと強調したが、戦後の安全保障政策の抜本的な転換となる。
反撃能力の保有が逆に地域の緊張を高める恐れはないのかなど論点は多い。野党は防衛増税に反対する。国際秩序が流動化する中での安保政策と財源の在り方を徹底して議論すべきだ。
少子化対策に関しては、児童手当の拡充や働き方改革などの基本方針に沿って「具体策の検討を進める」と述べた。しかし、従来政策の域を出ず、これで「異次元」と言えるのか。物価高騰対策や賃上げに関しても新味のある施策はなかった。
首相は先送りできない課題として憲法改正も挙げた。しかし、どの条項の改正がなぜ必要なのかにも触れずに改憲を主張するのは乱暴過ぎる。
4月には統一地方選や衆院補欠選挙がある。首相が「最も有効な未来への投資」と強調する少子化対策やコロナ規制の緩和には選挙に向けたアピールの思惑があろう。野党も対立軸を明確にしてもらいたい。そのためにも首相は「今後検討する」という答弁は一切封じ、徹底的な議論を行うよう求めたい。
通常国会が召集され、岸田文雄首相が施政方針演説を行った。先送りできない課題の筆頭に防衛力の抜本的強化を挙げ、昨年改定した国家安全保障戦略で反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛予算の大幅増額を決定したと強調。課題として「構造的な賃上げ」「次元の異なる少子化対策」を掲げた。
しかし、防衛予算増額の財源については「将来世代に先送りしない」と述べるにとどめ、昨年自らが表明した「増税」の明言を避けた。少子化対策も6月までに将来の予算倍増に向けた大枠を示すと述べただけで、その財源にも触れなかった。
首相は防衛力強化を「強い覚悟」で決定したと述べた。ならば自民党内に反対論が残るとはいえ、国民に負担を求める増税が必要だと自らが考える理由を丁寧に語るべきだ。少子化対策も財源を含む具体策が示されなければ論戦は成立しない。早急に具体策を示すよう求めたい。
首相は演説冒頭で「政治は慎重な議論と検討を積み重ねて決断」し、「その決断について国会で議論をし、最終的に実行に移す営みだ」と述べ、「国民の前で正々堂々議論」すると強調した。防衛力強化や原発を最大限活用するエネルギー政策の転換、新型コロナウイルスの感染症法上の5類への移行などは国会閉会中に決定。論戦の意義に言及したのは「国会軽視」との批判をかわす狙いだろう。
防衛力強化では、5年間で43兆円の予算をつぎ込み、他国を直接攻撃できる能力を整備する。首相は「専守防衛」「平和国家」を変えるものではないと強調したが、戦後の安全保障政策の抜本的な転換となる。
反撃能力の保有が逆に地域の緊張を高める恐れはないのかなど論点は多い。野党は防衛増税に反対する。国際秩序が流動化する中での安保政策と財源の在り方を徹底して議論すべきだ。
少子化対策に関しては、児童手当の拡充や働き方改革などの基本方針に沿って「具体策の検討を進める」と述べた。しかし、従来政策の域を出ず、これで「異次元」と言えるのか。物価高騰対策や賃上げに関しても新味のある施策はなかった。
首相は先送りできない課題として憲法改正も挙げた。しかし、どの条項の改正がなぜ必要なのかにも触れずに改憲を主張するのは乱暴過ぎる。
4月には統一地方選や衆院補欠選挙がある。首相が「最も有効な未来への投資」と強調する少子化対策やコロナ規制の緩和には選挙に向けたアピールの思惑があろう。野党も対立軸を明確にしてもらいたい。そのためにも首相は「今後検討する」という答弁は一切封じ、徹底的な議論を行うよう求めたい。