ホーム 社説

23年度県予算

2023年2月17日
◆「安心」具現化へ議論尽くせ◆

 県は「宮崎再生予算」と名付けた2023年度一般会計当初予算案をまとめ、きょう開会の2月定例県議会に提案する。知事選後の骨格予算の位置付けだが、総額約6557億円と河野県政で最大規模となった。

 経済の冷え込みを受け06年度以降の13年間、総額6千億円を割り込む時期が続いたが徐々に回復傾向を示し、21年ぶりに6500億円台に乗った。大型予算であることからも、4期目に入った河野知事の本領が発揮されるべき年度と言える。県民一丸となれるよう河野知事は説明と熱意を尽くし、県議会は活発な議論を重ねてほしい。

 歳出では、新型コロナウイルス禍や物価高からの再生と復興を目指す「宮崎再生」▽災害復旧や中山間地域の維持、医療体制充実を軸にした「安全・安心で持続可能なくらしづくり」▽少子化対策や移住・定住促進などの「活力ある未来のみやざきづくり」の3本柱で編成。

 特に「宮崎再生」分野で、予算規模は小粒ながらも生活者支援を掲げた点を評価したい。ひきこもりの当事者や家族への支援体制強化、自殺予防強化、子ども食堂や学習支援など子どもの居場所づくりに取り組む民間団体補助が含まれる。支援充実には市町村や民間団体との連携が欠かせない分野であり、これを機に協働関係を充実させ確実な成果につなげてほしい。

 政府はコロナを感染症法上の「5類」に引き下げる方針で、ワクチン接種や医療費など国費負担の行方は見えない。国費削減の懸念に加え、自治体によって予算措置の仕方が分かれる中で、県は従来通り医療・療養体制を確保する姿勢を当初予算からしっかりと打ち出した。

 防災・減災と国土強靱化(きょうじんか)対策も継続し、18年度以降の累計は約1360億円に上る。昨秋の台風14号が中山間地域に及ぼした被害も記憶に新しい。どこに住んでいても安心して生活できる基盤整備が不可欠であり、そこに力を注ごうというメッセージは時宜にかなう。

 歳入面の動向も見逃せない。自主財源は22年度比6・8%増の2755億円。全体に占める割合は42・0%と県政史上最高の数字となった。地方消費税清算制度の見直しと地方法人2税の偏在是正の結果、都市部と地方の財政格差が縮小されたこともあり、全国的にも地方都市の財政状況は「3割自治」から「4割自治」に改善している。

 独自性ある地方自治が展開できる環境が整ってきた半面、さらなる人口減少や高齢化という難題が待ち構えている。社会保障関係費の膨張にも対処しなくてはならない。財政健全化と施策内容を、中長期的視点で検証することが重要になる。

このほかの記事

過去の記事(月別)