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自民党大会

2023年3月1日
◆支持率急落 真摯に反省せよ◆

 内閣支持率が30%台前半に急落したのはなぜか―。その原因に対する反省がなければ、国民の信頼を得るのは難しいと言わざるを得ない。

 岸田文雄首相(自民党総裁)は自民党大会で、2012年末の政権奪還から約10年間の成果を強調し、「次の10年をつくる新たな一歩を踏み出す」と表明。4月の統一地方選と衆参5選挙区で実施される見通しの補欠選挙に向け「一丸となって勝ち抜こう」と呼びかけた。

 だが、支持率急落の一因となった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や昨年相次いだ閣僚の辞任にはひと言も触れず、物価高や少子化への対策でも新味のある政策は示さなかった。首相は「おごりを捨て、虚心坦懐(たんかい)に徹底的に国民の声に向き合う」と述べた。では、なぜ旧統一教会問題に触れないのか。国民に対し、反省の姿勢を真摯(しんし)に示すべきだろう。

 首相の発言で目立ったのは、自らの支持基盤を固めようという意図だ。演説では「この1年間で失ったものの大きさを実感する」と切り出し、安倍晋三元首相の銃撃事件を挙げて「安倍元首相の強力なリーダーシップの下、大きく国を前進させた」と強調した。菅義偉前首相時代も合わせて「前進の10年」と評価したのは党内の保守層を意識したものだろう。

 しかし、本当に失ったのは国民の信頼ではないか。昨年3月の党大会時点では共同通信調査で60%を超えていた内閣支持率は今年2月調査では33・6%まで下落。自民党の支持率も40%台後半から10ポイント近く落ちた。

 大会で採択した2023年運動方針は、立憲民主党や国民民主党の支持団体である連合や友好的労組との「連携強化」を明記した。支持基盤を広げ、野党分断を図る狙いだろう。

 運動方針はウクライナ侵攻や原油高・物価高騰を挙げて「わが国は戦後最大級の難局に直面」していると指摘、防衛力の抜本的強化などを政権の成果として強調した。しかし、個別政策の具体策は乏しい。首相は「政労使が共通の認識を持ち、構造的な賃上げを実現する」と述べたが、民間の賃上げは労使の交渉で決まるものだ。少子化対策の具体策や予算措置にも触れなかった。首相秘書官の差別発言で浮上したLGBT理解増進法案への言及もなかった。

 一方、憲法改正を巡り「時代は早期改正を求めている」と強調。「野党の力も借りながら、国会の場での議論を一層積極的に行う」と述べた。これも保守層の支持を得る狙いとみられる。しかし世論調査で政策の優先順位を聞くと、改憲の順位は低い。これこそ国民の声に謙虚に耳を傾けるべきではないか。

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