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習氏3期目が本格始動

2023年3月17日
◆武力より協調して信頼得よ◆

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)で習近平国家主席が史上初の3選を果たした。習氏との確執がささやかれ、引退する李克強首相の後任には習氏の腹心、李強氏が選出され、習派一色の3期目政権が本格的に始動した。

 新政権は新型コロナウイルスや不動産不況による経済の低迷、米中の覇権争い、台湾有事への警戒などさまざまな内憂外患を抱えての船出となった。

 習氏は全人代閉幕式の演説で、今世紀半ばまでに近代化された社会主義強国をつくり上げる国家目標を改めて提起。軍を「国家の主権と安全、発展の利益を守る鋼鉄の長城にする」と武力への信奉を隠さなかった。

 しかし、世界に信頼される新興大国となるには、国際協調、公正な経済体制と安定成長、人権の尊重が不可欠だ。習氏は「人類運命共同体づくり」や「平和、発展、協力」「共通の価値」の重要性も訴えた。言行一致で実現してほしい。

 中国はロシアのウクライナ侵攻1年に際し、停戦と和平を呼びかける文書を発表した。習氏が近く訪ロしてプーチン大統領と会談する予定との報道もある。中国はロシアに最も影響力を持つ国であり、和平の実現に本気で取り組むべきだ。

 李強首相は就任後初の記者会見で「中国と米国は協力するべきだ」と述べ、昨年11月の米中首脳会談の共通認識に基づき、両国間の対話を呼びかけた。

 2月、米国は中国の気球飛来に抗議し、ブリンケン国務長官の訪中を延期した。世界の平和と安定に重大な責任を持つ米中二大国の歩み寄りを望みたい。

 台湾問題について、習氏は「両岸(中台)関係の平和的な発展を促す」としながら「外国勢力の干渉と台湾独立の活動に断固反対し、祖国統一プロセスを推進する」と述べた。「平和的」という言葉から、米国などの台湾支援は拒否するが、台湾有事への過度な警戒は招きたくないという思惑がうかがえた。

 中国は来年初めの台湾総統選を控え、台湾の中国寄り野党、国民党へのてこ入れや住民の懐柔を狙う。だが、台湾住民の大多数は統一を望んでおらず、台湾当局は習氏の発言に反発し「台湾の主権と領土、民主主義と自由」の尊重を求めた。

 中国の秦剛外相は全人代の記者会見で、日中関係について「善隣友好の関係を望む」としながら、日本は対中抑止の「新冷戦」に参画するべきではないと日米同盟の強化に警戒感を示した。今年は日中平和友好条約締結45周年。習政権の始動を受け、日中両国も関係を立て直し、軍拡競争を回避するため首脳会談を含む積極的な対話を行う必要がある。

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