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米欧の金融不安

2023年3月21日
◆日本への影響 盲点はないか◆

 米国における銀行の連鎖破綻をきっかけに、世界の金融・株式市場で信用不安が拡大、スイス金融大手の救済買収に発展した。市場参加者をはじめ預金者や取引先の動揺が収まらなければ、さらなる破綻を招き、金融危機に陥る可能性がある。

 市場動揺の発火点は新興IT企業を事業基盤とする米西部カリフォルニア州の中堅、シリコンバレー銀行(SVB)の予期せぬ破綻だ。昨年末の総資産は2090億ドル(約28兆2千億円)と、リーマン・ショック後では最大の破綻となった。

 直後にはニューヨーク州が拠点の中堅、シグネチャー銀行も行き詰まった。同行は暗号資産(仮想通貨)関連の取引が多く、SVB破綻による信用不安で預金が流出したとみられる。米財務省や連邦準備制度理事会(FRB)などは、預金の全額保護と金融機関の資金繰りを助ける仕組みの導入を公表した。

 だが市場の不安は依然ぬぐえていない。経営再建中のスイス金融大手、クレディ・スイスは株価が急落。救済が不可避となり、同国金融大手UBSが買収・合併することで19日合意。並行してFRBや日銀など6中央銀行は、協調してドル資金の供給を拡充すると発表した。不安払拭を急いでもらいたい。

 厄介なのは震源地の米国や欧州で、金融緩和とその後の利上げを通じて、企業や金融機関にどの程度リスクが蓄積しているかを読みにくい点だ。SVBでは、新型コロナウイルス禍と金融緩和がネット企業の業績を押し上げ預金が増大。その後、景況悪化でIT企業からの預金が流出する一方、インフレ退治の大幅利上げで保有債券に損失が膨らんだ。類似の問題は他行にも潜んでいる可能性がある。

 米欧中銀が続ける金融引き締めの行方にも注意が必要だ。欧州中央銀行(ECB)は16日に追加利上げを決めたが、金融システムの安定に比重を置き利上げに慎重となれば、インフレが収束せず、米欧経済の足を引っ張る恐れがあるためだ。

 リーマン・ショックを受けて米国では、金融危機の再発防止へ銀行に対する監督規制が強化された。だがトランプ政権時の2018年、中小銀行では規制が緩和され、それが当局によるリスク把握の遅れにつながったと指摘される。監督の在り方の検証が不可欠だろう。

 日本は今回の事態を警鐘と捉えるべきだ。国内の超低金利で地方銀行などは運用益を求めて米国債に投資してきたが、FRBの利上げで多額の損失が生じている。「総じて充実した流動性、資本基盤を維持している」(鈴木俊一金融担当相)のは確かだが、盲点がないかどうか精査してもらいたい。

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