◆パワーと成熟ぶりを示した◆
野球の国・地域別対抗戦、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が3大会ぶりの優勝を果たした。宮崎市では日本代表「侍ジャパン」が事前合宿を行っており、喜びもひとしおだ。宮崎市のパブリックビューイング=写真、職場や家庭で、熱戦に見入った人も多かっただろう。新型コロナウイルスの影響で6年ぶりの開催となったWBCで、ハイレベルのしびれる戦いを制した日本代表をたたえたい。
昨年のワールドカップ(W杯)で健闘したサッカー人気に、野球は押され気味だった。しかし今大会で野球の魅力を再発見したファンも多い。栗山英樹監督が大リーガーも含めて現在、想定できる日本のベストメンバーを組んだことを評価したい。とりわけファン待望の大谷翔平選手は投打二刀流で大活躍を見せ、大谷人気はチーム全体を後押しする力にもなった。
日本は第1回(2006年)、第2回(09年)大会を、バントや機動力を交えたきめ細かい野球で連覇した。今回は力強い新生・日本野球の特徴が表れた。村上宗隆、岡本和真選手の豪快な本塁打。若い投手も交えた継投はスピード豊かで変化球もよく切れていた。パワーでも強豪に対抗した。
一方で、野球が地球スポーツの域に達していないことも再認識した。予選と合わせた参加国・地域数はわずか28。20チームによる本大会も1次リーグではレベル差があり、大差試合が目立った。
米国、日本に有利ともみられる組み分けなど、最大のマーケットである日米でのテレビ放映、興行に配慮した運営も散見された。公平さが担保されるべき国際大会での未成熟さが顕著だった。
次回大会は26年の予定だ。五輪から除外された野球唯一の「世界一決定戦」としてどう発展させるか。シーズン前の故障リスクを考慮して、大リーグの有力投手には出場回避する選手もいた。より多くのトップ選手が参加できるよう開催時期の見直しも検討すべきで、大会規定にも改善点は多い。営利追求だけでなく、スポーツとしての公正さを大事にしてほしい。
明治の初め、米国から日本に野球が伝来して約150年。WBC決勝の大舞台では初めて、発祥国と対戦した日本は国民的競技となった野球の成熟ぶりを示した。スポーツ交流史の長い歩みと深みを感じさせる快挙でもあった。