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日ウクライナ首脳会談

2023年3月25日
◆平和的解決目指し結束必要◆

 ウクライナを電撃訪問した岸田文雄首相はゼレンスキー大統領と会談し、ロシアの侵攻を厳しく批判、ウクライナ全土からの即時・無条件撤退を求めるとともに、「戦争犯罪や残虐行為に対して国際法に従って責任を追及する」との共同声明を発表した。

 岸田首相は5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)への大統領のオンライン出席を招待。共同声明は、中国の海洋進出を念頭に東・南シナ海情勢への深刻な懸念に言及し、台湾海峡の平和と安定の重要性も強調するなど、ロシアと中国両国への厳しい姿勢を鮮明にした。

 ロシアと中国は20、21の両日、モスクワで行った首脳会談で、中ロ連携を脅威だと見なす米欧に対抗し、戦略的な協力関係を誇示する姿勢を示しており、双方の対立の深刻化が浮き彫りになった。

 G7は結束してウクライナを支援し、平和的解決を目指さなければならない。同時に、国際秩序の不安定化が、紛争の拡大につながるような事態を防ぐ努力が必要だ。日本もG7議長国として国際社会の結束を高めるとともに、アジア地域を含む国際情勢の安定に向けた秩序再構築の道を探る構想を練りたい。

 岸田首相は訪問していたインドから極秘にチャーター機でポーランドに飛び、列車でウクライナの首都キーウ(キエフ)入りし、民間人が多数虐殺されたブチャを視察した。戦争犯罪を巡っては国際刑事裁判所(ICC)がプーチン大統領に逮捕状を出している。現地入りしたG7の首脳としては最後になったが、広島サミットを主導する議長として現地を事前に視察しておくことは、発言に説得力を持たせることになるだろう。

 岸田首相は日本独自の支援策として、エネルギー分野などで新たに4億7千万ドル(約620億円)の無償支援供与を表明。「日本ならではの形で切れ目なく支える」と述べた通り、武器輸出には制約がある日本としてできる支援を行いたい。

 重要なのは、対ロ制裁に距離を置く国々の協力を得ることと、国際秩序のさらなる不安定化を食い止めることだ。

 共同声明は対ロ制裁に関して「第三国が措置を回避し、損なわないよう期待」すると強調。「グローバルサウス」と呼ばれるアジアやアフリカなどの新興国や発展途上国への働きかけがさらに求められるだろう。

 岸田首相はウクライナ首脳会談後の共同会見で、中国の習近平国家主席に対して「率直な対話を重ね、共に責任ある大国として協力する建設的で安定的な関係構築を求めている」と強調した。その成果を上げられるのか。今後の手腕が問われる。

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