首相演説前に爆発
2023年4月19日
◆警護体制に不備なかったか◆
岸田文雄首相(自民党総裁)が衆院和歌山1区補欠選挙の応援演説を始める直前、筒状のものが投げ込まれ爆発した。警察は、現場にいて爆発物を使用したとみられる男の容疑者を逮捕。首相にけがはなかったものの、演説は取りやめになった。
動機は不明だが、暴力行為によって選挙運動を中断に追い込み、言論の自由を封じるようなことは断じて許されない。
昨年7月の参院選さなかには、演説中の安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した。警察には、強化したはずの警護体制に不備はなかったかについて検証の徹底を求めたい。
事件は15日午前、和歌山市の雑賀崎漁港で起きた。地元海産物の試食を終えた岸田首相が200人以上の聴衆の前に移動して演説をしようとしたところ、付近に筒状のものが投げ込まれ、大きな爆発音と同時に白い煙が上がった。
事件後、首相はJR和歌山駅前で街頭演説を再開した。だが、被害の程度によっては、与野党問わず有権者に直接訴える機会が制約されることなどで、選挙運動や投票行動に多大な影響を与える可能性があった。
選挙は有権者の意思に基づく民主主義実現の土台だ。その意義を壊しかねない今回の事件は、容疑者にいかなる理由があっても認められるものではない。与野党から非難の声が上がったのは当然だ。
首相は「大切な選挙をやり通さなければならない」、立憲民主党の泉健太代表は「民主主義のためひるまず、堂々と訴え続ける」と決意を語った。
政治リーダーとして必要な姿勢ではあるが、前提となるのは、選挙運動と両立する警護体制の構築だろう。
警察庁は安倍氏の銃撃事件を受け、昨年8月、警護の検証・見直し結果の報告書を公表した。警護担当者を適切に配置していれば事件を阻止できたと指摘、警護計画の事前審査など警察庁の都道府県警への関与強化を改善策に挙げた。
その方針に従って和歌山県警が策定した今回の警護計画について、警察庁は事前審査していたが、ではなぜ首相や聴衆の近くで爆発は起きたのか。選挙運動中の政治家や候補者が厳格な警護を嫌がる風潮はなお残る。
それでも警察側の責任は大きい。5月に先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を控え、関連の閣僚会合が始まっている。今月、宮崎市で開かれるG7農相会合においても、入念な警備体制の再チェックが欠かせない。
容疑者の動機解明も重要だ。犯行に至る経緯が分かれば、再発防止や有効な警護計画立案にもつながろう。
岸田文雄首相(自民党総裁)が衆院和歌山1区補欠選挙の応援演説を始める直前、筒状のものが投げ込まれ爆発した。警察は、現場にいて爆発物を使用したとみられる男の容疑者を逮捕。首相にけがはなかったものの、演説は取りやめになった。
動機は不明だが、暴力行為によって選挙運動を中断に追い込み、言論の自由を封じるようなことは断じて許されない。
昨年7月の参院選さなかには、演説中の安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した。警察には、強化したはずの警護体制に不備はなかったかについて検証の徹底を求めたい。
事件は15日午前、和歌山市の雑賀崎漁港で起きた。地元海産物の試食を終えた岸田首相が200人以上の聴衆の前に移動して演説をしようとしたところ、付近に筒状のものが投げ込まれ、大きな爆発音と同時に白い煙が上がった。
事件後、首相はJR和歌山駅前で街頭演説を再開した。だが、被害の程度によっては、与野党問わず有権者に直接訴える機会が制約されることなどで、選挙運動や投票行動に多大な影響を与える可能性があった。
選挙は有権者の意思に基づく民主主義実現の土台だ。その意義を壊しかねない今回の事件は、容疑者にいかなる理由があっても認められるものではない。与野党から非難の声が上がったのは当然だ。
首相は「大切な選挙をやり通さなければならない」、立憲民主党の泉健太代表は「民主主義のためひるまず、堂々と訴え続ける」と決意を語った。
政治リーダーとして必要な姿勢ではあるが、前提となるのは、選挙運動と両立する警護体制の構築だろう。
警察庁は安倍氏の銃撃事件を受け、昨年8月、警護の検証・見直し結果の報告書を公表した。警護担当者を適切に配置していれば事件を阻止できたと指摘、警護計画の事前審査など警察庁の都道府県警への関与強化を改善策に挙げた。
その方針に従って和歌山県警が策定した今回の警護計画について、警察庁は事前審査していたが、ではなぜ首相や聴衆の近くで爆発は起きたのか。選挙運動中の政治家や候補者が厳格な警護を嫌がる風潮はなお残る。
それでも警察側の責任は大きい。5月に先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を控え、関連の閣僚会合が始まっている。今月、宮崎市で開かれるG7農相会合においても、入念な警備体制の再チェックが欠かせない。
容疑者の動機解明も重要だ。犯行に至る経緯が分かれば、再発防止や有効な警護計画立案にもつながろう。