G7外相会合
2023年4月21日
◆国際秩序構築に限界も露呈◆
国際社会が「歴史の転換期」に直面する中で、先進7カ国(G7)が結束、連携していく必要性は再確認できた。ただ、その先の新しい国際秩序の構築に向けた具体的な道のりを描けたとは言い難い。3日間の討議は、G7の苦悩と限界も浮き彫りにした格好で、来月の首脳会議(広島サミット)に重い課題を残したと言える。
長野県軽井沢町で開かれたG7外相会合が共同声明を発表、閉幕した。声明は、ウクライナを侵攻したロシアに対し、即時無条件撤退を要求。対ロ制裁の継続とウクライナ支援を表明するとともに、第三国によるロシアへの支援の停止を求めた。
中国の覇権的な行動については、力による一方的な現状変更に強く反対し、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した。
広島サミットにつなげる外相会合で議長国の日本は「分断・対決ではなく協調」と「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を主要なコンセプトに据えた。力を入れたのは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との協力強化。そして欧州にもインド太平洋地域への関心を深めてもらおうと狙った。
その意味で、インド太平洋に関するG7の議論を定例化する方針で一致、主要20カ国(G20)議長国のインドとの連携を強化していくことに合意した意義は大きい。一方で、グローバルサウスを巡って「主権や領土の一体性の尊重といった国際秩序の根幹を守るべきという認識を共有すべく一層の働き掛けを行っていくことなどを確認した」(林芳正外相)ものの、共同声明に明確な形で盛り込むことができなかったのは残念だ。
ウクライナ侵攻から間もなく1年2カ月。民主主義陣営と専制主義陣営の対立が深まる中で「G7か、中ロか」と踏み絵を迫り、陣取り合戦のような構図となれば、分断は一層先鋭化するだろう。新興・途上国は、政治体制や歴史など固有の事情が異なる。民主主義を押し付けようと、上から目線の姿勢をとれば、かえって離反する恐れがある。各国の状況を踏まえた丁寧なアプローチが欠かせない。
共同声明では「核兵器のない世界という究極の目標に向けたコミットメントを再確認する」と表明、中国の核戦略の拡大に対する懸念も盛り込まれた。核保有国と非保有国の厳然とした溝があり、橋渡しを掲げる日本外交の真価が試されるだろう。
ウクライナ侵攻が長期化し、打開の道は見いだせていない。米中の覇権争いも激化する。G7は、今回確認した原則を堅持したうえで、関係の深い国や地域に、それぞれが重層的な外交を展開していく地道な努力が求められている。
国際社会が「歴史の転換期」に直面する中で、先進7カ国(G7)が結束、連携していく必要性は再確認できた。ただ、その先の新しい国際秩序の構築に向けた具体的な道のりを描けたとは言い難い。3日間の討議は、G7の苦悩と限界も浮き彫りにした格好で、来月の首脳会議(広島サミット)に重い課題を残したと言える。
長野県軽井沢町で開かれたG7外相会合が共同声明を発表、閉幕した。声明は、ウクライナを侵攻したロシアに対し、即時無条件撤退を要求。対ロ制裁の継続とウクライナ支援を表明するとともに、第三国によるロシアへの支援の停止を求めた。
中国の覇権的な行動については、力による一方的な現状変更に強く反対し、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した。
広島サミットにつなげる外相会合で議長国の日本は「分断・対決ではなく協調」と「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を主要なコンセプトに据えた。力を入れたのは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との協力強化。そして欧州にもインド太平洋地域への関心を深めてもらおうと狙った。
その意味で、インド太平洋に関するG7の議論を定例化する方針で一致、主要20カ国(G20)議長国のインドとの連携を強化していくことに合意した意義は大きい。一方で、グローバルサウスを巡って「主権や領土の一体性の尊重といった国際秩序の根幹を守るべきという認識を共有すべく一層の働き掛けを行っていくことなどを確認した」(林芳正外相)ものの、共同声明に明確な形で盛り込むことができなかったのは残念だ。
ウクライナ侵攻から間もなく1年2カ月。民主主義陣営と専制主義陣営の対立が深まる中で「G7か、中ロか」と踏み絵を迫り、陣取り合戦のような構図となれば、分断は一層先鋭化するだろう。新興・途上国は、政治体制や歴史など固有の事情が異なる。民主主義を押し付けようと、上から目線の姿勢をとれば、かえって離反する恐れがある。各国の状況を踏まえた丁寧なアプローチが欠かせない。
共同声明では「核兵器のない世界という究極の目標に向けたコミットメントを再確認する」と表明、中国の核戦略の拡大に対する懸念も盛り込まれた。核保有国と非保有国の厳然とした溝があり、橋渡しを掲げる日本外交の真価が試されるだろう。
ウクライナ侵攻が長期化し、打開の道は見いだせていない。米中の覇権争いも激化する。G7は、今回確認した原則を堅持したうえで、関係の深い国や地域に、それぞれが重層的な外交を展開していく地道な努力が求められている。