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衆参5補選投開票

2023年4月25日
◆接戦背景に根強い政治不信◆

 衆院と参院の5補欠選挙が投開票された。自民党は4勝1敗の結果を残したが、重視した選挙区での勝利は接戦の末だった。投票率の低迷も踏まえれば、有権者の下した判断は岸田文雄首相の政権運営への信任に直結するとは言えまい。

 補選の対象は衆院の千葉5区、和歌山1区、山口2、4区と参院大分選挙区。国政選挙は昨年7月の参院選以来で、この間の岸田政治の評価が問われる選挙だった。

 与党は自民が全選挙区に候補を擁立し、公明党の推薦を得た。野党は立憲民主党が千葉5区に候補を立てるなど、いずれも与野党対決の構図になった。

 自民が補選前に議席を持っていたのは、千葉5区と山口2、4区の3選挙区。党総裁である岸田首相は勝敗ラインに関し「自民党の議席を守り抜き、拡大すべく全力を尽くす」と述べていた。

 しかし、肝心なのは選挙戦を通じ、政策遂行の土台となる政治への信頼を回復できたかではないか。参院選後、自民と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の不明朗な関係が明らかになり、資質が疑問視された閣僚の辞任も相次いだためだ。

 勝敗の行方が特に注目されたのは、与野党が総力を挙げて臨んだ千葉5区、和歌山1区、大分選挙区だった。

 千葉の補選は、自民新人候補が当選を決めたが、互角の戦いだった立民新人に他候補の票を加えれば、自民を上回った。自民に所属していた議員の「政治とカネ」問題による辞職を受けた補選であり、接戦の背景に有権者の根強い政治不信があったことは間違いない。首相は、民意を真(しん)摯(し)に受け止め、不祥事の再発防止に取り組むべきだ。

 和歌山の補選は、野党系議員の知事転身によるもので、自民は議席奪還を目指した。保守地盤とされ、元議員の自民候補は知事の支持も取り付けたが、日本維新の会の新人候補が激戦を制した。維新は防衛力の抜本的強化を図る首相の増税方針や、少子化対策の財源として政権内で浮上している社会保険料上乗せ案に反対を表明。行財政面での「身を切る改革」を優先すべきだと訴えた。

 参院大分選挙区では自民新人候補が辛勝した。野党の支持基盤が厚い地域で敗北した立民は深刻に捉えなくてはならない。

 山口は、2区が岸信夫前防衛相の体調不良による辞職、4区が安倍晋三元首相の死去を受けた補選だった。両区では後継の自民候補が当選したものの、対立候補も一定の票を獲得し、2区では肉薄した。その意味するところを岸田首相は熟慮し、独善的な政策決定を排するよう重ねて求めたい。

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