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半世紀後人口3割減

2023年4月29日
◆社会の再構築と人材育成を◆

 半世紀後の日本は総人口が3割減って8700万人に、65歳以上の高齢者の割合は4割を占める―。わが国の未来図を示す新しい将来推計人口を厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した。

 6年前の前回推計に比べ人口減少のスピードはわずかに緩み、総人口が1億人を下回る時期は2056年と3年先送りされた。とはいえ、外国人入国者が今後増えるとの見通しから減少速度が緩和されたに過ぎず、少子高齢化が深刻な状況であることに変わりはない。

 何よりもまず、加速する少子化に歯止めをかけなければならない。今回の推計では、1人の女性が生涯に産む子ども数を示す合計特殊出生率について、長期的には1・36になるとした。前回推計の1・44を下回る。

 人口減少社会とは超高齢社会と同義である。日本が「年老いた国」になったという現実を直視する必要があろう。超高齢社会では働き手が減り、消費や税収が落ち込み、国内市場は縮小する。道路や水道といったインフラや、社会保障制度の維持も難しくなる。

 人口増加を当然のこととして築いてきた社会の在り方を見直し、人口減少を前提とした社会に組み替える工夫を迫られる。

 自治体には、居住地を集約して商店や医療機関に通いやすいコンパクトなまちづくりが一層求められよう。企業は超高齢化に伴う消費者ニーズの変化を見誤れば経営が先細りになりかねない。デジタル化などを通じた生産性の向上、成長分野に狙いを定めた設備投資も必要だ。

 とりわけ懸念されるのは医療・福祉分野の担い手の確保だ。高齢者数がピークに近づく40年には96万人の人手不足になるとの政府試算もある。サービスを満足に受けられない医療・介護難民が急増すると地域社会は立ちゆかなくなってしまう。

 人口が減っても皆が健康で豊かに暮らせるよう社会を再構築し、地域社会の変容に柔軟に対応できる人材育成を進めることが欠かせない。

 また、今回の推計で特徴的なのは、国内に住む外国人が大幅に増える見通しが示された点だ。外国人の出入国は国際情勢や経済動向にも左右されるから、期待するほど増えるか不透明な要素はあるものの、推計では70年の外国人数は現在の3倍以上となって総人口の1割を超えるとしている。

 ならば、外国人と共生できる社会づくりを急がねばならない。人権面で批判の多い入管行政、劣悪な労働環境が問題視される技能実習制度など、改善すべき点はあまりにも多い。外国人材受け入れに伴う課題に真正面から取り組む必要がある。

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