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猟銃立てこもり事件

2023年5月30日
◆凶行なぜ防げないか検証を◆

 長野県中野市で男が女性を刺し、通報で駆け付けた警察官に猟銃を発砲した。その後、現場近くの市議会議長宅に立てこもり、警察に身柄を確保されたが、女性と警察官2人、もう1人の女性の計4人が死亡した。

 男は市議会議長の長男で、31歳。警察官1人に対する殺人容疑で逮捕された。県公安委員会から猟銃や空気銃など計4丁の所持を許可されていた。

 谷公一国家公安委員長は「手続きに問題があったとの報告は現時点では受けていない」としている。

 日本の銃規制は世界一厳しいとも言われる。しかし、猟銃による凶行は後を絶たない。

 1996年、旧北方町で男が猟銃で知人男性を殺害し逃亡する事件が発生。2007年には長崎県佐世保市のスポーツクラブで2人が亡くなり、6人が重軽傷を負った乱射事件や、22年には埼玉県ふじみ野市で訪問診療先を訪れた医師が射殺された事件などが起きている。

 事件発生は25日夕。「男が女性を刺した」と110番があった。容疑者の男は現場に到着した警察官に発砲し、両親らと同居する自宅に立てこもった。約12時間後に説得に応じ、両手を上げて屋外に出たところで身柄を確保された。

 銃刀法は散弾銃やライフル銃などの猟銃や空気銃の所持を原則として禁止。狩猟や有害鳥獣の駆除、標的射撃を目的とする場合に限り、住所地の公安委員会に申請、許可を受けて所持できる。

 地元警察署による銃の取り扱いに関する講座や筆記・実技試験があり、許可の取得に数カ月かかることが多い。近所の人への聞き込みも行われる。

 また精神障害やアルコール依存症、公共の安全を害する恐れなど「欠格事項」について、銃刀法は細かく定めている。これほど厳しい規制をかけても、凶行が続く。

 動機や犯行の経緯などについて解明を進めるのはもとより、なぜ防げなかったのか、現行の規制に穴はないのかを検証する必要がある。

 警察庁によると21年末時点で許可を受けた猟銃は15万3千丁。県内では22年12月末時点で3028丁が登録されている。

 今回の事件で逮捕された男について、近所の人は「家にこもりがち」などと話すが、危うさは感じていなかったようだ。

 所持を許可された個人が銃を管理するのではなく、警察や射撃場、業界団体などがまとめて管理して使用時に渡す、あるいは、銃は本人の手元に置いていても、実包は射撃場や団体などが管理するといった新たな仕組みづくりも検討する必要があるだろう。

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