不適切保育
2023年6月2日
◆早急に子ども守る仕組みを◆
保育士から乱暴な扱いを受けたり、暴言を吐かれたりするなど、子どもの心身に深刻な影響を及ぼしかねない「不適切な保育」が各地で後を絶たない。全国の保育所について、こども家庭庁は全市区町村を通じ国として初の実態調査を実施。昨年4~12月に計914件が確認されたと明らかにした。うち90件は「虐待」と認定されている。
静岡県裾野市の私立保育園で昨年12月、園児を逆さづりにしたなどとして暴行容疑で保育士3人が逮捕された事件が調査のきっかけになった。ただ不適切保育の明確な定義はない。保育所などからの報告がまだない事案も少なからずあるとみられ、調査結果は氷山の一角との見方も根強い。
こども家庭庁は再発防止に向けガイドラインを策定。不適切保育について「虐待等と疑われる事案」とし、判断に迷ったときは自治体に相談するよう促した。一方、虐待については、激しく揺さぶる、戸外に締め出す、おむつを替えない―などの具体的な例を示し、児童福祉法を改正して自治体への通報を義務付けることを検討している。
だが不適切保育の具体例は示さず、曖昧さが残る。国と自治体、保育施設の間で情報交換と議論を絶やさず、子どもをしっかりと守れる仕組みづくりに取り組むべきだ。さらに詳しい実態把握も必要になるだろう。
気がかりなのは、虐待など不適切保育があった場合の報告基準や手続きを保育所に周知しているとした自治体が3割程度にとどまることだ。相談窓口やコールセンターなどは6割近くが設置していない。また自治体と並行して調査した保育所の7割が「不適切な保育は0件」と回答するなど、捉え方に問題がある可能性も指摘されている。
裾野市の事件後も、三重県桑名市の認定こども園で保育士が園児に給食を完食させようと、むりやり口に押し込むなど不適切保育は相次いで明るみに出ている。子どもは被害を訴えるのが難しい。確認・対応が遅れれば命に関わることも考えられ、早急に安全網を整備しなければならない。
慢性的に人手不足の現場で働く保育士の負担軽減と待遇改善も課題だ。認可保育所では保育士1人が受け持つ子どもの人数が、1~2歳児は6人、3歳児は20人など国の配置基準で決まっている。政府は基準より保育士を増やした保育所に対する運営費を加算する方針を決めた。
しかし受け持ち人数を減らすことは見送るという。保育士の奪い合いになり、現場が混乱する可能性があるとの理由からだが、子どもを安心して預けられる環境を整えるために検討を重ねることが欠かせないだろう。
保育士から乱暴な扱いを受けたり、暴言を吐かれたりするなど、子どもの心身に深刻な影響を及ぼしかねない「不適切な保育」が各地で後を絶たない。全国の保育所について、こども家庭庁は全市区町村を通じ国として初の実態調査を実施。昨年4~12月に計914件が確認されたと明らかにした。うち90件は「虐待」と認定されている。
静岡県裾野市の私立保育園で昨年12月、園児を逆さづりにしたなどとして暴行容疑で保育士3人が逮捕された事件が調査のきっかけになった。ただ不適切保育の明確な定義はない。保育所などからの報告がまだない事案も少なからずあるとみられ、調査結果は氷山の一角との見方も根強い。
こども家庭庁は再発防止に向けガイドラインを策定。不適切保育について「虐待等と疑われる事案」とし、判断に迷ったときは自治体に相談するよう促した。一方、虐待については、激しく揺さぶる、戸外に締め出す、おむつを替えない―などの具体的な例を示し、児童福祉法を改正して自治体への通報を義務付けることを検討している。
だが不適切保育の具体例は示さず、曖昧さが残る。国と自治体、保育施設の間で情報交換と議論を絶やさず、子どもをしっかりと守れる仕組みづくりに取り組むべきだ。さらに詳しい実態把握も必要になるだろう。
気がかりなのは、虐待など不適切保育があった場合の報告基準や手続きを保育所に周知しているとした自治体が3割程度にとどまることだ。相談窓口やコールセンターなどは6割近くが設置していない。また自治体と並行して調査した保育所の7割が「不適切な保育は0件」と回答するなど、捉え方に問題がある可能性も指摘されている。
裾野市の事件後も、三重県桑名市の認定こども園で保育士が園児に給食を完食させようと、むりやり口に押し込むなど不適切保育は相次いで明るみに出ている。子どもは被害を訴えるのが難しい。確認・対応が遅れれば命に関わることも考えられ、早急に安全網を整備しなければならない。
慢性的に人手不足の現場で働く保育士の負担軽減と待遇改善も課題だ。認可保育所では保育士1人が受け持つ子どもの人数が、1~2歳児は6人、3歳児は20人など国の配置基準で決まっている。政府は基準より保育士を増やした保育所に対する運営費を加算する方針を決めた。
しかし受け持ち人数を減らすことは見送るという。保育士の奪い合いになり、現場が混乱する可能性があるとの理由からだが、子どもを安心して預けられる環境を整えるために検討を重ねることが欠かせないだろう。