地方分権30年
2023年6月8日
◆地域維持と新しい自治必要◆
国会が地方分権の推進を決議して30年。国から権限と財源が移譲され、身近な行政は地方自治体に任せられてきた。その成果をあまり生かせないまま多くの自治体は高齢化と人口減少に直面する。地域の維持が最大の課題だと言える。
分権の推進は1993年6月に衆参両院で決議された。東京一極集中の排除、中央集権的行政の在り方の問い直しを掲げ、地方自治の確立を求めた。前年に日本新党が結成され、地方分権を旗印に掲げ各党を駆り立てたことも背景にある。
国の中央省庁再編の動きに合わせ地方分権の論議は進み、自治体を国の下請けにする「機関委任事務」は2000年に廃止された。国と地方の関係は明治以来の「上下・主従」から「対等・協力」に大きく変わった。自治体の仕事や裁量権が広がり、創意工夫を生かせる素地がある程度は整った。
1999年からは分権の受け皿整備を名目とした「平成の大合併」が始まる。強力な財政支援もあり3232あった市町村数はほぼ半減した。しかし人口流出を止める有効策を打ち出せず、中心部以外の地域がさびれたことが、次の合併への警戒感を高めた。
小泉政権が2004年度から推進した国と地方の財政を巡る三位一体改革では、地方への約3兆円の税源移譲を実現することと引き換えに、補助金や地方交付税を大きく削減した。深刻な打撃を受けた自治体も多く、地方行政の自由度が落ちたと指摘できるだろう。
30年を振り返ると、国の省庁再編、財政改革に付随して地方の改革は進んだ。近年は国が大きな改革を志向せず、政治の争点にもあまりならないため、道州制導入といった大きな分権改革の議論は停滞したままだ。
現在は自治体からの提案に基づく規制緩和が中心。法に基づく実施計画の作成が補助の条件という形で自治体を縛る例が目立つ。分権に逆行するような国の動きは控えねばならない。
多くの自治体にとって持続可能性が低くなり、道路や橋、上下水道などのインフラの補修・更新、医療、介護のような行政サービスの継続、ガソリンスタンドや日用品販売店など生活インフラの維持が喫緊の課題だ。住民の生活を守る方策を確立しなければならない。
人口減少もあって一つの自治体だけで全ての行政サービスを賄うのは難しい。自治体間の連携・補完に加え、行政の役割を担う地域の組織も育て、多様な方法で支え合う新しい自治の仕組みの構築が急務である。国から権限や財源の移譲をさらに得ながら、地域の創意工夫を引き出すことも重要になる。
国会が地方分権の推進を決議して30年。国から権限と財源が移譲され、身近な行政は地方自治体に任せられてきた。その成果をあまり生かせないまま多くの自治体は高齢化と人口減少に直面する。地域の維持が最大の課題だと言える。
分権の推進は1993年6月に衆参両院で決議された。東京一極集中の排除、中央集権的行政の在り方の問い直しを掲げ、地方自治の確立を求めた。前年に日本新党が結成され、地方分権を旗印に掲げ各党を駆り立てたことも背景にある。
国の中央省庁再編の動きに合わせ地方分権の論議は進み、自治体を国の下請けにする「機関委任事務」は2000年に廃止された。国と地方の関係は明治以来の「上下・主従」から「対等・協力」に大きく変わった。自治体の仕事や裁量権が広がり、創意工夫を生かせる素地がある程度は整った。
1999年からは分権の受け皿整備を名目とした「平成の大合併」が始まる。強力な財政支援もあり3232あった市町村数はほぼ半減した。しかし人口流出を止める有効策を打ち出せず、中心部以外の地域がさびれたことが、次の合併への警戒感を高めた。
小泉政権が2004年度から推進した国と地方の財政を巡る三位一体改革では、地方への約3兆円の税源移譲を実現することと引き換えに、補助金や地方交付税を大きく削減した。深刻な打撃を受けた自治体も多く、地方行政の自由度が落ちたと指摘できるだろう。
30年を振り返ると、国の省庁再編、財政改革に付随して地方の改革は進んだ。近年は国が大きな改革を志向せず、政治の争点にもあまりならないため、道州制導入といった大きな分権改革の議論は停滞したままだ。
現在は自治体からの提案に基づく規制緩和が中心。法に基づく実施計画の作成が補助の条件という形で自治体を縛る例が目立つ。分権に逆行するような国の動きは控えねばならない。
多くの自治体にとって持続可能性が低くなり、道路や橋、上下水道などのインフラの補修・更新、医療、介護のような行政サービスの継続、ガソリンスタンドや日用品販売店など生活インフラの維持が喫緊の課題だ。住民の生活を守る方策を確立しなければならない。
人口減少もあって一つの自治体だけで全ての行政サービスを賄うのは難しい。自治体間の連携・補完に加え、行政の役割を担う地域の組織も育て、多様な方法で支え合う新しい自治の仕組みの構築が急務である。国から権限や財源の移譲をさらに得ながら、地域の創意工夫を引き出すことも重要になる。