◆次世代に投資し地域発展を◆
県は総額280億円の2023年度一般会計補正予算案をまとめ、きょう開会する県議会6月定例会に提案する。昨年12月の知事選直後で骨格編成となっていた当初予算に肉付け。全体像が示され、河野県政4期目がようやく本格始動する。当初予算と合わせた額は約6838億円で、当初予算ベースでは過去最大となった=写真。
元職との事実上の一騎打ちとなった昨年の知事選で、元職が前評判以上に得票して肉薄。「変化」や「わくわく感」を渇望する県民意識の表れと受け止め、未来志向型の予算編成に反映させて「宮崎再生・創造予算」とした。
厳しい選挙戦を勝ち抜いた直後、河野知事は「政治家として一皮も二皮もむけなければならない」と発言、堅実さが特徴だった政治スタイルからの脱却を示唆した。人口減少、感染症拡大、物価高騰、自然災害の激甚化といった重要課題への対策が急務になる中、政治家としての脱皮ぶり、独自性が発揮されているかどうか、まずは県議会で検証してほしい。
河野知事にとっては、これまで以上に牽引力と指導力が必要な局面となる。「子ども・若者」「グリーン成長」「スポーツ観光」の3分野で日本一挑戦プロジェクトを掲げ、分野ごとに関係部局による特命チームを発足。新機軸に意欲を見せた。始動したばかりでまだ具体像は見えないが、既存事業の延長や寄せ集めでは意味をなさないことは百も承知だろう。
地域の維持と発展のためには次世代育成と若者定着が基盤であり、とりわけ「子ども・若者」への支援強化が重要度を増す。若者の県外流出を食い止める、逆に他地域から子どもや若者世代を呼び込む―くらいの子育て・教育環境を整備し、目玉施策を全国に発信したい。
子どもを産み育てやすい環境づくりには安定的な雇用環境と、若者世代の経済的不安の解消、質の高い教育など打開のポイントはある。「日本一」というキャッチフレーズが「空砲」とならないよう、次世代中心の「人」への投資が欠かせない。
施策立案力とともに効率的な財政運営も手腕を問われるところ。今回の予算では基金を積極的に活用した。自主財源比率は過去最高の41・6%を確保。2基金残高は23年度末には400億円台を維持する見通しとなり財政の健全性を担保している。県民の疲弊感や危機感を好転させる戦略を加速させたい。