防衛財源法
2023年6月20日
◆帳尻合わせの理屈 目に余る◆
防衛費増額の財源を確保するための特別措置法が国会で成立した。特別会計の剰余金などをためておく「防衛力強化資金」の創設が主な目的だ。歳出改革、決算剰余金、そして増税と合わせた4本柱で防衛費の歳出増を賄う計画だが、いずれの財源もまやかしとしか言いようのない理屈で成り立っている。
岸田政権は昨年末、防衛関係費を国内総生産(GDP)比で2%へ大幅に増やす方針を決定。2023年度から5年間の総額を43兆円とし、増額分の財源は増税などの4本柱で捻出することとした。防衛財源法は強化資金を一般会計内に設けることを定めており、特会の剰余金や国有財産の売却益など税外収入をためておき、防衛費に充てる仕組みだ。
23年度予算では、後年度の支出分も含めて4兆円超の税外収入をかき集めた。だが国有財産の売却益などは普通一度限りであり、安定財源とは言い難い。
国会審議では財源に充てるほかの3本の柱も、帳尻合わせのあやふやな理屈で成り立っていることが明らかとなった。
政府は防衛費増額へ27年度時点で必要な追加財源約4兆円のうち、1兆円強を歳出改革で確保するとし、スタートの23年度はまず2100億円を達成したと強調する。
しかし、これは本来支出されるはずの予算が削減されたわけではない。社会保障以外の費用は伸びを年330億円に抑える予算編成上の目安があり、その目安額が物価上昇分だけ大幅に増えたと見なしたに過ぎない。あくまで机上の計算であり、それをあたかも「削減」のごとく説明するのは国民の目を欺くに等しい。
過大な予備費や、現実より高い金利想定で国債費を多めに予算計上したりすれば、決算剰余金は意図的に増やせる。
自民党が、国民に反対の強い防衛増税の先送りを政府に求めたのは、増税せずともこのからくりなどの駆使で防衛財源は充当できると踏んだからだ。
その結果、政府の「骨太方針」には増税先延ばしの検討が盛り込まれた。しかし元の予算は、国債による借金頼みである点を忘れてはならない。
防衛増税は27年度で1兆円強を確保する方針だが、骨太方針により時期を含め実施は不透明になった。防衛費増の財源スキームは、早くも崩壊寸前と言えないだろうか。
物価高に賃上げや年金が追い付かない現状を考えれば、そもそも増税は「絵に描いた餅」であろう。その点に岸田文雄首相は気付くべきだ。ずさんな財源策の原因は身の丈に余る巨額防衛費にある。その見直しは今からでも遅くない。
防衛費増額の財源を確保するための特別措置法が国会で成立した。特別会計の剰余金などをためておく「防衛力強化資金」の創設が主な目的だ。歳出改革、決算剰余金、そして増税と合わせた4本柱で防衛費の歳出増を賄う計画だが、いずれの財源もまやかしとしか言いようのない理屈で成り立っている。
岸田政権は昨年末、防衛関係費を国内総生産(GDP)比で2%へ大幅に増やす方針を決定。2023年度から5年間の総額を43兆円とし、増額分の財源は増税などの4本柱で捻出することとした。防衛財源法は強化資金を一般会計内に設けることを定めており、特会の剰余金や国有財産の売却益など税外収入をためておき、防衛費に充てる仕組みだ。
23年度予算では、後年度の支出分も含めて4兆円超の税外収入をかき集めた。だが国有財産の売却益などは普通一度限りであり、安定財源とは言い難い。
国会審議では財源に充てるほかの3本の柱も、帳尻合わせのあやふやな理屈で成り立っていることが明らかとなった。
政府は防衛費増額へ27年度時点で必要な追加財源約4兆円のうち、1兆円強を歳出改革で確保するとし、スタートの23年度はまず2100億円を達成したと強調する。
しかし、これは本来支出されるはずの予算が削減されたわけではない。社会保障以外の費用は伸びを年330億円に抑える予算編成上の目安があり、その目安額が物価上昇分だけ大幅に増えたと見なしたに過ぎない。あくまで机上の計算であり、それをあたかも「削減」のごとく説明するのは国民の目を欺くに等しい。
過大な予備費や、現実より高い金利想定で国債費を多めに予算計上したりすれば、決算剰余金は意図的に増やせる。
自民党が、国民に反対の強い防衛増税の先送りを政府に求めたのは、増税せずともこのからくりなどの駆使で防衛財源は充当できると踏んだからだ。
その結果、政府の「骨太方針」には増税先延ばしの検討が盛り込まれた。しかし元の予算は、国債による借金頼みである点を忘れてはならない。
防衛増税は27年度で1兆円強を確保する方針だが、骨太方針により時期を含め実施は不透明になった。防衛費増の財源スキームは、早くも崩壊寸前と言えないだろうか。
物価高に賃上げや年金が追い付かない現状を考えれば、そもそも増税は「絵に描いた餅」であろう。その点に岸田文雄首相は気付くべきだ。ずさんな財源策の原因は身の丈に余る巨額防衛費にある。その見直しは今からでも遅くない。