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LGBT法成立

2023年6月21日
◆根深い偏見超え法整備急げ◆

 LGBTなど性的少数者への理解増進を目的とする新法が成立した。性的指向などの多様性を巡って「不当な差別はあってはならない」と基本理念を示した上で、国や自治体は理解増進のために必要な施策の実施に努めると定めている。

 規制や罰則を伴わない理念法とはいえ、先進7カ国(G7)で唯一、少数者への差別を禁止する法令がない中で一歩前進という見方もできるだろう。しかし超党派議員連盟で2年前に合意され、新法の大本になった法案と比べると、いくつもの点で後退したと言わざるを得ない。

 自民党は、党内で「伝統的家族観」を重視して法制化に反対した保守派の主張に配慮し、修正に修正を重ねた。基本理念の「不当な差別はあってはならない」という表現はもともと議連案では「差別は許されない」だった。「不当」と言えるほどひどくなければ、差別とは認められないと、くぎを刺しておきたいという思惑が見て取れる。

 一体、誰のための法律なのか。当事者らに寄り添った運用を求めたい。加えて、差別禁止法や同性婚の法制化といった課題は山積する。新法成立で一息ついている余裕はない。

 超党派議連案は2021年5月にまとめられたが、自民党保守派から「訴訟が多発する社会になりかねない」などと異論が噴出。国会提出には至らず、たなざらしにされていた。

 今年2月、岸田文雄首相が同性婚の法制化を巡って否定的ともとれる見解を示し、議論に火がついた。直後に首相秘書官から「見るのも嫌だ」と差別発言が飛び出し、岸田首相は秘書官を更迭。自民党幹部に法案提出の準備を急ぐよう指示した。

 自民党は議連案の修正に乗り出し、G7広島サミット開幕前日の先月18日、公明党とともに与党案として提出。会期末の土壇場で成立にこぎつけた。

 その過程で議連案の中の「性自認」という文言は「性同一性」になり、最終的に「ジェンダーアイデンティティ」に置き換えられた。また理解増進の施策実施に関し「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」との条項が追加された。

 背景には「自認する性で権利を認めれば、トイレや風呂でトラブルが起きる」など自民党保守派の主張がある。ことさら不安をあおるような発言と根深い偏見が、修正の背景にある事実を直視する必要がある。

 共同通信の世論調査で7割以上の人が「同性婚を認める方がよい」と回答。同性婚を認めない現行制度を「違憲」「違憲状態」とする地裁判決も相次ぐ。全国レベルのパートナーシップ制度の導入も含め、法整備に指導力を発揮すべきだ。

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