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ジェンダー指数

2023年6月28日
◆旧態依然の意識 改革急務だ◆

 ジェンダー平等という物差しで測ると、日本は完全な発展途上国である。先進国に追い付くどころか差は広がり、引き離されている。

 スイスのシンクタンク、世界経済フォーラム(WEF)が、男女格差を数値化した「ジェンダー・ギャップ指数」と各国の順位を発表した。2023年版の報告を見ると、日本は調査対象の146カ国中125位で、116位だった昨年よりもさらに順位を落とした。06年の発表開始以来、最低順位である。

 指数は経済・教育・健康・政治の4分野で、完全平等を1として平等度を算出する。日本は教育と健康分野でほぼ平等を達成しつつあるが、政治分野はわずか0・057、世界で最も低いレベルの138位だった。経済分野も0・561で123位に沈んだ。

 政治・経済分野の“成績”が悪いのはなぜか。現在、衆院議員の女性比率は約10%、女性閣僚は2人だけ。女性首相は誕生したことがない。政治の世界は中高年男性が牛耳っている。実社会は急激に多様化が進んでいるにもかかわらず、政治は旧態依然だ。

 社会の変化に気付いていないか、気付いても無視しているのか。例えば、各種の世論調査で同性婚や選択的夫婦別姓の導入に賛意を示す人が多数となっているのに、与党の自民党は少数の強硬な反対派に配慮して法改正に動かない。

 女性議員の比率を上げるためには、与党の取り組みが不可欠だが、やる気を疑わざるを得ない。自民党は今後10年間で女性議員の比率を30%に引き上げる計画を発表したが、そんな悠長な目標設定では世界との差は開くばかりだろう。

 経済分野では、管理職の女性比率の低さが際立つ。23年版の男女共同参画白書を見ると、22年の就業者に占める女性の割合は45・0%でほぼ半数であり、諸外国にそれほど負けていない。だが女性管理職の比率は12・9%、上場企業の女性役員は9・1%にとどまる。役職が上に行くほど女性の割合が減る。

 企業で重い役割を担う女性が少ないことは、賃金格差の要因ともなっている。女性の賃金は男性の8割に満たない。

 ジェンダー・ギャップ指数の算出で、指標となっていない分野の格差も気になる。司法や学術、芸術、メディアなどだ。

 社会的な影響が強い分野だけに改善は急務だ。日本社会の男女格差を底の部分で支えているのは性別役割分担意識であろう。男性が外で働き、女性が家事や育児・介護などの無償労働を担うという考え方や実態を、一刻も早く過去のものとしなければならない。

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