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野党の課題

2023年6月29日
◆骨太な国家像 有権者に示せ◆

 政権を担いうる野党の存在は、政府、与党の独善的な権力行使に歯止めをかける上で欠かせない。衆院解散・総選挙が先送りされた今こそ、野党各党は政策面での対案と地力を磨くときだ。

 先に閉幕した国会では、日本の将来に関わる防衛力強化のための防衛財源確保法、原発の60年超運転を可能にするエネルギー関連の改正5法、難民申請中の強制送還停止に制限をかける改正入管難民法などが成立した。

 野党第1党の立憲民主党は反対の論陣を張ったものの、岸田文雄首相は衆院解散をちらつかせて選挙準備が整わない立民をけん制。自民党など与党に比べ勢力で大きく劣る立民は押し切られる形になった。

 しかし、世論にこれらの法制定や改正を疑問視する声がありながら、大きなうねりにならなかったのは、立民の訴えが広く国民の賛同を得られなかったからではないか。

 安全保障政策を巡って立民は昨年12月、党見解をまとめた。その中で「質の高い防衛力の整備」や「防衛費の一定の増額」に理解を示す一方、防衛関連費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる政府方針について「数字ありきで合理性に欠ける」と批判。ミサイルの長射程化は必要としつつも、専守防衛を逸脱する可能性があるとして、政府が認定する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有には「賛同できない」とした。

 党内の保守系とリベラル系の双方に配慮したと受け止められる内容だ。この党見解を基に、国会論戦に臨んだが、安保環境悪化への国民の不安に応え、政権担当能力を示せたとは評価できまい。

 岸田首相がエネルギー危機と気候変動に対処するためだとする原発回帰政策への指弾も同様だ。その主張にはうなずける部分があるが、具体的な代替策を用意しなくては「反対するだけの政党」とのレッテルは、はがれないだろう。

 「身を切る改革」を掲げる日本維新の会、「対決より解決」を唱える国民民主党も物足りない。政権交代をうかがうのであれば、与党との法案修正協議にとどまらず、骨太な国家像を含む対抗軸を、より明確にしてもらいたい。

 併せて野党各党が取り組むべきは、党勢拡大につながる地方での組織と日常活動の強化による地力の養成だ。そのためには地方議員を大幅に増やす必要がある。4月の統一地方選では維新が伸長したとはいえ、例えば41道府県議選での野党公認候補の当選者数は合計でも自民党の4割に満たない。民意を踏まえた政権運営にはやはり強力な野党の存在が不可欠だ。

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