ホーム 社説

防衛予算膨張

2023年9月7日
◆果たして「平和国家」なのか◆

 2024年度一般会計予算の各省庁の概算要求が締め切られた。総額は2年ぶりに過去最大を更新し、114兆円前後となる見通し。金額を示さない「事項要求」も多く、年末に決める予算案は過去最大だった23年度の114兆3812億円を超える可能性がある。

 予算膨張の要因の一つが、岸田政権が力を入れる防衛力の抜本強化だ。防衛省は金額を示さない米軍再編関連経費を除いても、23年度当初予算を1兆1384億円上回る過去最大の7兆7385億円を計上した。

 これに加え、政府は「総合的な防衛体制の強化」として、公共インフラの整備や研究開発などに省庁横断で取り組むとしている。この中にも事項要求が多く、防衛関連予算はさらに膨れあがる。

 岸田政権は防衛装備品の輸出ルール緩和を巡る自民、公明両党の実務者協議で英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出や、特定分野で殺傷能力のある武器の輸出を認める方針を示している。

 23年版の「防衛白書」は、安全保障の基本政策について、平和主義を掲げる憲法の下「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」と明記している。しかし、米中両国に次ぐレベルの巨額の防衛関連予算と、武器輸出を目指すような国が「平和国家」と言えるのか。

 ウクライナ危機や中国の軍備拡張で国際秩序の流動化は進むが、その中で日本はどういう国家像を目指すのか。徹底した国民的議論が必要だ。

 岸田政権は昨年12月、外交・安保の長期指針となる「国家安全保障戦略」など3文書を改定した。対国内総生産(GDP)比で1%程度だった防衛予算を、関連費も含め2%にすると打ち出し、「防衛力整備計画」では23~27年度の防衛費総額を約43兆円にするとしている。

 今回の予算編成は整備計画の2年目。概算要求としては新文書の策定後初めてだ。その大枠に沿った要求だが本当に必要な装備か、厳しく精査すべきだ。

 例えば、安倍政権下で断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策として導入する「イージス・システム搭載艦」では2隻の建造費として約3800億円を計上。これまでの経費を含めれば1隻当たりの取得経費は約3950億円に上る。従来のイージス艦より大幅に額が膨れあがったのは「予算増額」を前提にした計画だからではないか。

 防衛費増額という結論に合わせて膨れあがる自衛隊が本当に機能するのか。専守防衛に徹し、地域の平和と安定に資する体制を整備すべきだ。

このほかの記事

過去の記事(月別)